チラーの選び方
チラーは、冷却対象の設備や工程に適した機種を選定することが重要です。 必要な温度まで冷えない、流量が不足する、配管条件に対応できないなど、選定を誤ると設備トラブルや品質不良の原因になります。
チラー選定の方法は、大きく以下の2つに分かれます。
- 設備の要求仕様が決まっている場合
- 設備の要求仕様が決まっていない場合
それぞれのケースについて解説します。
設備の要求仕様が決まっている場合
設備メーカーや装置仕様書によって、必要な冷却条件が明確になっている場合は、その要求仕様を満たすチラーを選定します。
確認する主な項目は以下の通りです。
- 設定温度
- 冷却能力
- 流量
- 揚程
- 設置環境(屋内・屋外)
- 冷却方式(空冷・水冷)
例えば、
- 循環水温度:25℃
- 必要流量:30L/min
- 必要揚程:15m
- 冷却能力:3kW
といった条件が明確であれば、その仕様を満たす機種を選定します。
アピステのチラーラインナップ
設備の要求仕様が決まっていない場合
設備の構想段階や新規ラインの立ち上げ時には、必要な仕様が決まっていないこともあります。
この場合は、まず冷却回路の構成を決め、その後で必要な仕様を整理していきます。
①開放回路か密閉回路かを決める
最初に確認するのが、冷却対象との接続方式です。
開放回路の場合
開放回路とは、冷却対象のタンクや槽が大気に開放されている回路です。
例えば、
- めっき槽
- 洗浄槽
- 薬液槽
- 大型タンク
などが該当します。
開放回路では、以下のいずれかの方法を選択します。
水槽なしチラーを使用する
冷却液を直接循環させる方式です。
構成がシンプルで熱交換ロスも少なくなりますが、循環液の種類や設備側の条件によっては適用できない場合があります。
水槽有チラー+熱交換器を使用する
チラー側と設備側を熱交換器で分離する間接冷却方式です。
設備側の液体が、
- 薬液
- 切削油
- 洗浄液
などの場合に多く採用されます。
設備液がチラー内部に流れ込まないため、チラーを保護しやすいことが特長です。
密閉回路の場合
密閉回路とは、冷却水が外気と接触しない循環回路です。
例えば、
- レーザー加工機
- 半導体製造装置
- 分析機器
- 成形機
などが該当します。
密閉回路では一般的に水槽有りチラーを選定します。
水槽を介して温度変動を吸収できるため、安定した温度制御が行えます。
アピステは水槽なし、水槽あり、どちらもラインナップしています。
(水槽なしチラー)

(水槽ありチラー)



②必要な仕様を確認する
回路構成が決まったら、必要な能力を確認します。
設定温度を決める
まずは冷却対象が必要とする温度を確認します。
例えば、
- スピンドル冷却:25℃
- レーザー発振器冷却:22℃
- 検査機器冷却:20℃
など、設備ごとに適切な温度条件があります。
チラーは、その温度を安定して維持できる機種を選定する必要があります。
アピステにはさまざまな温度範囲で使用できるチラーをラインナップしていますので、幅広いニーズに合わせて適切なチラーをお選びいただけます。
冷却能力を決める
設備から発生する熱量に応じて、必要な冷却能力を決定します。
冷却能力が不足すると、設定温度まで冷えない、温度が安定しないといった問題が発生します。
必要な冷却能力は熱量計算によって求めます。
詳しくは熱量計算方法をご参照ください。
また、算出した熱量に対して、選定したチラーが実際の使用条件で十分な冷却能力を発揮できるか確認する必要があります。
詳しくはチラー能力確認方法をご参照ください。
ポンプ能力(流量・揚程)を決める
チラーには冷却水を循環させるためのポンプが搭載されています。
設備側で必要となる流量と揚程を確認し、それらを満たす機種を選定します。
揚程は配管長や継手、高低差などによって変化します。
詳しくは揚程計算方法をご参照ください。
③設置場所を決める(屋内・屋外)
次に、チラーの設置場所を決めます。
屋内設置
屋内設置は、
- 配管距離を短くできる
- 操作しやすい
- メンテナンスしやすい
というメリットがあります。
一方で、空冷式の場合は排熱が室内に放出されます。
屋外設置
屋外設置は、
- 室内スペースを使用しない
- 排熱の影響を受けにくい
というメリットがあります。
ただし、
- 防雨対策
- 凍結対策
- 配管保温
などが必要になります。
<アピステの屋外設置可能なチラー>
高耐久・省エネチラー
MAX50%の高い省エネ性能と、厳しい現場環境や屋外での使用にも耐える耐久性を兼ね備えたチラー。温度精度も高く、さまざまな用途に対応します。
④空冷式か水冷式かを決める
最後に冷却方式を選定します。
空冷式チラー
空気と熱交換して冷却する方式です。
メリット
- 冷却水設備が不要
- 導入が容易
- メンテナンスが比較的簡単
デメリット
- 周囲温度の影響を受けやすい
- 排熱が発生する
水冷式チラー
冷却水と熱交換して冷却する方式です。
メリット
- 高効率
- 周囲温度の影響を受けにくい
- 室内への排熱が少ない
デメリット
- 冷却水設備が必要
- 配管工事が必要
チラー選定に必要な計算方法
チラーの能力を選定する際は、
(1)熱負荷の熱量 < (2)チラー冷却能力
となるように選定します。熱負荷の熱量、チラー冷却能力は下記式にて算出します(計算例、参考資料あり)。
(1)熱量計算方法
熱量計算式
Q[kW] =- Q :負荷容量[kW]
- ①Vs :対象物の体積[m3]
- ②Cs :対象物の比熱[kJ/kg・℃]
- ③γs:対象物の密度[kg/m³]
- ④ΔT:対象物の温度差[℃]
- ⑤ t :対象物の冷却時間[sec]
計算例(1)
タンク内の800 Lの作動油が1時間で30℃⇒60℃へ温度上昇するとき
下物性表より、②1.95、③870 また、④60 - 30 = 30
単位換算を行い、①800 L = 0.8m3、⑤1h = 3600sec
上記数値を計算式に代入して、
( 0.8 x 1.95 x 870 x 30 / 3600 ) x 1.2(安全率) = 13.6 kW

計算例(2)
設備へ流入させる冷却水がIN:26℃、OUT:29℃、流量が45L/minのとき
下物性表より、②4.18、③998 ④29 - 26 = 3
流量を分子と分母に分解し、下記単位換算表を基に単位換算すると、 36 L/min = 36 L / 1 min = 0.036 m3 / 60sec よって、①0.036、⑤60
上記数値を計算式に代入して、
( 0.045 x 4.18 x 998 x 3 / 60 ) x 1.2(安全率) = 11.3kW
※循環溶液が水の場合、物性値等を係数として、温度差[ΔT]と流量[A]
だけで下記式でも求められます。
Q[kW] = 0.07 × A[L/min] × ΔT[℃]

計算例(3)
質量3kgの鉄製のワークを熱処理後、3分間の間に250⇒40℃まで冷却したいとき
下物性表より、②0.46 また、④250 - 40 = 210
単位換算を行い、⑤3min = 180sec
①、③に関しては、体積[m3] x 密度[kg/m3] = 質量[kg] と単位換算できるので、① x ③ = 3となり、
上記数値を計算式に代入して、
( 3 x 0.46 x 210 / 180) x 1.2(安全率) = 1.93 kW
単位換算表
| ①体積Vs | 50 L | = 0.05 m3 |
|---|---|---|
| 100 L | = 0.1 m3 | |
| 1000 L | = 1 m3 | |
| ②比熱Cs | 1 cal/g・℃ | = 4.18 kJ/kg・℃ |
| 1 kcal/kg・℃ | = 4.18 kJ/kg・℃ | |
| 1000 J/kg・℃ | = 1 kJ/kg・℃ | |
| ③密度γs | 1 g/cm3 | = 1000 kg/m3 |
| ⑤時間t | 1 min | = 60 sec |
| 1 H | = 3600 sec |
物性表
- 数値は全て20℃のとき。
- 表の値は参考値です。この表を用いた計算結果につきまして弊社はいかなる責任も負いかねます。
| 物質名 | ②比熱(kJ/kg・K) | ③密度(kg/m3) | |
|---|---|---|---|
| 液 体 |
水 | 4.18 | 998 |
| 水溶性切削油(水90%) | 3.90~4.05 | 940~960 | |
| 潤滑油 | 1.80~1.95 | 850~870 | |
| スピンドル油 | |||
| 作動油 | |||
| 金 属 |
鉄(鋼材) | 0.46 | 7870 |
| アルミニウム | 0.91 | 2700 | |
| 銅 | 0.39 | 8900 | |
| 真鍮 | 0.38 | 8500 | |
| 亜鉛 | 0.39 | 7150 | |
| 非 金 属 |
セラミック | 0.80 | 3600~3950 |
| ガラス | 0.80~0.84 | 2600~2700 | |
| ベークライト | 1.59 | 1270 | |
| 樹 脂 |
ABS(スチレン・ブタジエン等) | 1.35~1.65 | 1000~1150 |
| EP(エポキシ樹脂) | 1.10 | 1850 | |
| PC(ポリカーボネート) | 1.25 | 1200 | |
| PE(ポリエチレン) | 2.30 | 910~960 | |
| PET | 1.25 | 1450~1670 | |
| PMMA(アクリル) | 1.48 | 1200 | |
| PP(ポリプロピレン) | 1.95 | 900 | |
| PS(ポリスチレン) | 1.35 | 1030~1070 | |
| PVC(ポリ塩化ビニル) | 0.85~2.1 | 1160~1450 |
(2)チラー能力確認方法
循環水温度(チラーの設定温度)、周囲温度(空冷の場合)、冷却水温度(水冷の場合)を確認し、対象機種の特性グラフから算出します。
例)循環水温度25℃、周囲温度20℃の時、PCU-3300Rの冷却能力を求めます。

上記グラフより冷却能力が3600Wと求められます。(周波数60Hzにて選定)
揚程計算方法
冷却水を循環させるのに必要なポンプの力は「揚程」で表すことができます。
揚程は、チラーと負荷(装置)をつなぐ配管の状況によって変わりますが、ポンプの能力 > 配管より算出した必要揚程となることが条件となります。以下に、配管条件等から、揚程を算出する方法をご紹介します。

ステップ1 : 配管長を求めます。
チラーから装置までの配管の長さ :
3+5+4=12m×2(往復分)=24m…①
ステップ2 : 継手の抵抗を直管長に変換し、配管長に加えます。
継手の直管相当長を表より求めます。
表より…ねじ型90°ショートエルボの25A→1.6m
1.6×4(ヵ所)=6.4m…②
①+②=24m+6.4m=30.4m…③
| 名称 | 継手形状 | 管径(上段B)(下段mm) | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1¼ | 1½ | 2 | 2½ | ||
| 25 | 32 | 40 | 50 | 65 | ||
| 90° ショートエルボ |
ねじ | 1.6 | 2.0 | 2.3 | 2.6 | 2.9 |
| フランジ | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.9 | 1.1 | |
| 90°ロングエルボ | ねじ | 0.8 | 1.0 | 1.0 | 1.1 | 1.1 |
| フランジ | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 0.9 | |
継手の形状によって抵抗が変わるため、上記の表にて直管長に変換したときの値を確認します。

ステップ3 : 流量と配管径から「損失水頭※Hf(m)」を求め、「ステップ2」配管長合計にかけます。
流量30L/min、配管径25Aの場合、右のグラフよりHf=0.04Hf(m)…④
③×④=30.4×0.04=1.2(m)…⑤
※損失水頭:菅の摩擦による圧力を配管の径別、流量毎に配管1m毎の長さで表したもの。
※ウィリアム・ヘーゼン公式
Hf=5.4775×10-3・C-1.85・D-4.87・Q1.85・L・α
(D:菅の内径、Q:流量、L:菅の長さ、α:安全率)

ステップ4 : チラーから装置までの上昇高さを加え、揚程を算出します。
チラーから装置までの高さ:5mの場合…⑥ ⑤+⑥=1.2(m)+5(m)=6.2(m)
必要な揚程は 6.2m…⑦
ステップ5 : 4で算出した揚程を満たすポンプを選定します。
グラフに示されたチラーの揚程能力は、流量30L/minのときは揚程が35m(60Hzの場合)。
従ってこのチラーの揚程能力は必要揚程(6.2m)を満たしています。
35m > 6.2m
例1) 循環水流量30?/minの時PCU-3310Rの揚程は(必要流量>定格流量の場合)
※上記のグラフより揚程は、35mと求まります
チラー選定の流れまとめ
チラーを選定する際は、まず設備の要求仕様が決まっているかを確認します。
仕様が決まっていない場合は、
- 開放回路か密閉回路かを決める
- 設定温度を決める
- 冷却能力を決める
- ポンプ能力(流量・揚程)を決める
- 設置場所(屋内・屋外)を決める
- 空冷式か水冷式かを決める
という順番で検討すると、設備に適したチラーを効率的に選定できます。特に、冷却能力とポンプ能力の不足はトラブルの原因となるため、十分な余裕を持った機種選定が重要です。
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