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バリアフリーによる世界の安心安全な都市づくり SDGs~目標11. 住み続けられるまちづくりを~

バリアフリーによる世界の安心安全な都市づくり SDGs~目標11. 住み続けられるまちづくりを~

SDGsは「誰ひとりとして残さない」を合言葉に持続可能な世界を目指す目標ですが、障がい者や高齢者にも住みやすい都市を実現すべく立てられた目標があります。

特に公共交通機関は生活上の障害となる要素が多く、「交通バリアフリー」という考え方が広まっています。

本記事では、SDGsと交通バリアフリー先進国の現状、世界で見られるバリアフリーの課題についてご紹介します。

1.SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」とは

2015年の国連サミットで採択された国際目標SDGsは、17の目標と169のターゲットに分けて地球上の課題解決に臨んでいます。

そのうち目標11「住み続けられるまちづくりを」は脆弱な立場にある人々を含め、すべての人々に配慮した都市づくりを目指したもので、以下のようなターゲットがあります。

・11-2:2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障がい者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
・11-7:2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障がい者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。


特に障がい者や高齢者は、都市での生活で不便を感じる機会が多いため、公共交通機関や公共スペースを容易に利用できるよう配慮する必要があります。その考え方のひとつが「バリアフリー」です。

次の章から交通バリアフリーの現状について見ていきましょう。

2.そもそもバリアフリーとは

バリアフリーとは「バリア(障害・障壁)を取り除く」ことを意味します。

高齢者や障がい者が生活上で不便を感じる段差の解消を行う、あるいは歩行をサポートする手すりを設置するなど、建築的な要素を指すことが多くありましたが、近年は健常者や外国人などの社会的弱者を含む「すべての人」が対象と考えられるようになりました。

バリアフリーと一緒によく使われる言葉として、「ユニバーサルデザイン(すべての人が使いやすいデザイン)」がありますが、バリアフリーは今あるものからバリア(障害・障壁)を取り除くことを指し、ユニバーサルデザインは最初から使いやすいようにデザイン設計をするという違いがあります。

現代のバリアフリーにおいて障害には「物理的」・「制度的」・「文化や情報」・「意識」の4つがあるとされており、それらの要素を取り除く動きが世界的に見られます。

今回はその中でもSDGsで言及された「交通」に限ってバリアフリーを見ていきましょう。

3.世界のバリアフリー先進国における公共交通サービス

健常者を含むすべての人が対象となるバリアフリーですが、その普及を確認するには最も身体が不自由である障がい者の使いやすい設備が整っているかが指標となります。

欧米では高齢者や障がい者の移動に制約が生まれるのは人権の問題だとして、早くから対策が進められていますが、とくにバリアフリー先進国である4つの地域の公共交通サービスをご紹介します。

北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)

北欧では1951年にデンマークで提唱されたノーマライゼーションの考えにもとづき、公共交通機関はすべての障がい者・高齢者に対応できるように整備されています。

ノーマライゼーションとは障がいがあろうと一般市民と同等の権利が保障されるべきという考え方で、ドアツードアの希望にも応えられるスペシャル・トランスポート・サービス(STS)というサービスや、足が悪くても乗り込みやすい超低床路線バスが普及しています。

アメリカ

アメリカでは1990年にアメリカ障害者法(ADA)が制定されました。これにより、すべての公共施設・公的機関・雇用を障がい者が容易に利用できるように義務化され、違反すると罰則があります。

例えば、歩道は広く平らなものにし、自転車は専用レーンを設けて歩行者の危険を少なくするよう配慮されています。また路線バスは低床型が普及し、市民が進んで障がい者の手伝いをするなど国内での意識も高いですが、州による格差が大きいのが問題点です。

香港

高齢化が問題になっている香港では1995年の「リハビリテーション白書」法以後、交通バリアフリーの整備が急速に進んでいます。

空港から目的地まで障がい者がスムーズに移動できる公共設備や地上へのエレベーター、触覚ガイドパス、エスカレーター可聴装置などが整備され、交通サービスでは車いす専用エリアのある列車や低床バス、無料車いすや杖のあるタクシーが一般的になっています。

障がい者の通勤通学用にリハバスという特別サービスもあり、公共交通機関を利用しにくい障がい者へのサービスが提供されています。

ニュージーランド

障がい者がふつうに暮らす国といわれるニュージーランドは、1925年にニュージーランド・スタンダード、1975年に障がい者地域福祉法(DPCW)などが定められ障がい者福祉について厳しい法整備がされています。

例えば、あらゆる道路の縁石を障がい者が安全に通れるようにし、従わない建築物は建築拒否または政府通告するなどバリアフリーを徹底していています。

また障がい者専用のタクシーを配備するトータルモビリティという制度があり、半額クーポンなども配られます。これによって障がい者は通勤通学など社会参加が可能になり、公共交通機関は設備改良資金を抑えられる仕組みになっています。

4.世界と日本の交通機関バリアフリーの課題

バリアフリー先進国がある反面、交通バリアフリーが進展しない国々もあります。日本を始めとした世界各国の交通機関バリアフリーに関する課題を見ていきましょう。

鉄道、メトロ(日本)

超高齢化が進む日本ではすべての駅のバリアフリー化を目標としていますが、狭い国土と高齢化ならではの課題があります。

・駅の構造上の問題
各線が複雑に絡み合い駅のスペースも限られている都心駅では、新たなエレベーターやエスカレーター、多機能トイレスペースの確保などが物理的に難しい。
・資金不足
ホームドアの設置には、設備設置費用、車両扉の統一、運転技術の向上、運行ダイヤの調整など膨大なコストがかかる。国や地方公共団体の支援がないと難しい。
・人材不足
無人駅や少人数のスタッフしかいない駅などは、乗り降りの介助や設備メンテナンスなどが難しい。

BRT(インド)

BRT(bus rapid transit)とは、鉄道に代わりバスが人々を長距離輸送する、近年注目されている方法です。鉄道のバリアフリー化が難しい地域でも高齢者や障がい者を目的地にスムーズに運べるため、世界で導入が進んでいますが課題もあります。

インドのデリーの例では、長距離を走るBRTはデリー市、連邦政府、交通局、民間バス会社、周辺の州との関係がうまくいかず、運行は乱れ、専用レーン付近で混雑が起こったため住民が訴訟に出る結果となりました。

各機関の連携と住民の理解が得にくい地域ではBRT導入は難しいと言えるでしょう。

航空機(日本)

航空機に関してもバリアフリーに向けた課題があります。多くの国で航空機の搭乗(乗船)口へのアクセスが階段のみであり、障がい者が自力で乗降できる設備がありません。多くの場合は、空港の車いす用昇降機やスタッフの補助でクリアできますが、日本では空港内の移動の複雑さなどが課題になっています。

日本で車いす用昇降機を使用する場合は事前申請が必要であり、申請後は専用カウンターへ移動し、空港内専用車いすと機内専用車いすへ乗り換え、種類によって電動車いすは持ち込めないなど、搭乗までの手続きが煩雑です。

健常者と同じ扱いをされる欧米と比べて不便さを訴える人が多く見受けられます。

道路(イタリア)

観光大国イタリアは街並み自体が世界遺産であることが多く、歴史的建造物を守る制度とバリアフリー化の共存に苦心しています。

イタリアの石畳を車いすで使用するにはつらく、杖に引っかかる危険性もありますが、街並みを大きく変えなければならず観光資源の保護という視点から見るとバリアフリー化は簡単ではありません。

そして歩道や道路に面した歴史的建造物は政令で厳しく守られており、建築物を傷つける可能性がある道路の拡張や補修は難しいという点も、バリアフリー化を阻む要因のひとつとなっています。

5.まとめ

すべての人々が住みやすいまちづくりを行うには、生活上不便を感じやすい障がい者や高齢者のニーズをくみ取った都市形成が重要です。

中でも交通バリアフリーは世界的に需要が大きいものの、北欧やアメリカといったバリアフリー先進国に比べて日本やインド、イタリアなどのように地域事情による課題も山積しています。

法整備や観光業との兼ね合いといった難しい問題もありますが、SDGsを通した更なるバリアフリーの普及が求められます。

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