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世界の食糧問題 SDGs~目標2.飢餓をゼロに~

世界の食糧問題 SDGs~目標2.飢餓をゼロに~

世界人口の増大に伴って食糧需要も高まりを見せていますが、食糧生産者の多くは所得が低く、健全な食糧供給の足かせとなっています。

また、彼らの生活に密接に関わる農産物貿易と食糧市場の状況も農家の生活を厳しくしており、さらなる改善が期待されています。

今回は、食糧生産を支える農家の現状を中心に、食糧問題について解説します。

1.SDGs目標2「飢餓をゼロに」

2001年に策定されたMDGsを継ぐ国際目標として立てられたSDGsは、持続可能な世界の実現にむけて17の目標を設定しています。

そのうち2番目の目標「飢餓をゼロに」は、前身のMDGsでも取り上げていた飢餓問題の解決を引き続き目指しており、8つのターゲットを掲げました。

中でも安定的な食糧供給で飢餓を撲滅しようと、食糧生産を支える生産者の所得と平等性の改善のために策定したターゲットが3つありますが、簡単に要約すると以下のようになります。

・2030年までに、小規模食糧生産者の農業生産性及び所得を倍増させる
・ドーハ開発ラウンドの決議に従い、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正、防止する
・食糧価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食糧市場及びデリバティブ市場に関する情報への適時のアクセスを容易にする
※これらは、各ターゲットの要約になります。

以上のターゲットで取り上げられた小規模食糧生産者や農産物貿易、食糧市場の状況を改善するためには何ができるのでしょうか。次の章からそれらを巡る現状を確認していきましょう。

2.世界の食糧市場を支える小規模農家の現状

国連では、小規模農業を「労働力の過半を家族が占める農林漁業」と定義しています。少人数で農業を営む小規模農家ですが、世界の食糧供給の大部分を担っているのがその小農です。

彼らを取り巻く状況を見ていきましょう。

世界の72%が小規模農家

小規模・家族農業ネットワーク・ジャパンのデータによると、女性・先住民・家族農家・牧畜民・漁業者をはじめとする小規模食糧生産者は5億7千万戸に及び、世界の農家の72%を占めるとされています。

こうした小規模農家は、世界の食糧の約8割を生産しており、食糧供給の基盤を支える重要な役割を果たしています。

しかし、大半の小規模農家は貧困により生産に有効な設備にアクセスできず、自給自足する分の農作物も生産できないため、市場で作物を販売する余裕がありません。

彼らの生産性が上がれば世界の食糧生産量の増加が見込めますが、さまざまな課題により十分な可能性を発揮できていません。

小規模農家の生産性と所得

2017年の世界銀行のデータによると、小規模農家が多い後発開発途上国の全穀物収穫量(ton/ha)は2.00と、高所得国6.06の約3分の1程度にとどまり、生産性が低いことがわかります。

生産性が低いと、当然ながら所得も下がってしまいます。国際連合食糧農業機関(FAO)による小農の1日当たりの平均所得に関する調査では、エチオピア0.8ドル、ケニア1.4ドル、ネパール2.7ドルと、1日の所得が5ドルにも達していません。

自給自足とは言っても不足する食料は買って生活していますが、所得が少ないため十分な食料を購入できず、副業をする農家もおり、結果的に農作物の生産量が制限されています。

農業に必要な資源・システムを利用できない

低所得国では、農作物の生育に必要な栄養分を与える肥料を十分に使用できていません。

世界銀行のデータによれば、1ha当たりの肥料の利用量が低所得国は13.5kg、高所得国は137.4kgと、所得が低いほど肥料を活用できず、効率の悪い生産を行っていることがわかります。

3.農産物貿易の現状

増え続ける食糧需要を活発な農産物貿易が支えています。しかし、国や地域別に見てみると収支に不均衡が目立ち、各国が貿易により恩恵を受けているとは言い切れません。

農産物を輸入に依存すると国内の農業強化が難しくなるため、輸入と国内生産のバランスをとることが求められます。次から、農産物貿易に関わる世界情勢を見ていきましょう。

拡大を続ける世界の農産物貿易

北米、ヨーロッパ、東アジアを中心に世界の農産物貿易は拡大を続けています。FAOの調査によると、2000年から2012年までの12年間で貿易額は3倍に、貿易量は60%増加したとされています。

そのうち、小麦やトウモロコシといった主要農産物の輸出は上位5カ国で7割以上を占め、一部の国が輸出の大部分を占める構造になっています。

貿易赤字に苦しむ低所得国

サブサハラや中東、北アフリカは人口増加による需要に生産が追い付かない、あるいは経済成長によるニーズが多様化しているといった背景から、農産物輸入が増えて貿易赤字を計上しています。

輸入が増えると海外の安い農作物が国内に流通するため、国内農業が衰退する恐れがあり、問題視されています。

この傾向は今後も続くと予測されており、輸出地域と輸入依存地域の二極化が進んでいますが、この事態を悪化させているのが輸出補助金です。

輸出補助金とは、産品の輸出時に政府が支給する補助金のことで、国内価格が国際価格より高くても輸出できるため、輸出シェアが変動し貿易構造を歪曲させてしまいます。

それにも関わらず、EUを中心に現在も導入されており、低所得国の貿易赤字が悪化する原因となっています。

4.不安定な食糧市場の現状

2005年から2008年までの3年間で世界の食糧価格は高騰し、20カ国以上の国で食糧暴動が発生したとされています。その後も食糧価格は乱高下を続けましたが、世界銀行の調べでは、2010~2011年に食費が増えたことで約7,000万人が極度の貧困(購買力が1日1.9ドル以下)に陥ったと報告されました。

食糧価格の急激な変動は主に貧困層と小規模農家を直撃します。なぜ食糧市場の不安定性が顕在化しているのでしょうか。

世界の食糧価格の変動

1975年から2000年までは、技術革新による生産性向上により食糧価格が安定していました。しかし、2000年以降は国際的に乱高下を続け、一時期コメの価格は3倍にも膨れ上がり2007年には国際的なコメ騒動に発展しました。

食糧危機による価格高騰の影響は、主に貧困層が受けます。中でも農作物を自給している小規模農家は、まかないきれない不足分を購入して生活していますが、価格が上がると食糧を買えず生活もままなりません。

小規模農家の働きが十分に発揮されるためには、安定的な食糧価格を維持し、彼らの就業環境を改善する必要があります。

食糧価格の4つの変動要因

国際的な食糧価格は、需給状況だけではなくさまざまな要素が合わさって決定されますが、主な変動要因は次の4つとされています。

・気候による豊作・不作
・紛争
・輸送インフラ(パナマ運河など)
・政治的問題(ソマリア沖海賊など)

いずれも解決が難しい問題に思えますが、各国が協力して仕組みを作ることで、防げる危機もあります。

例えば、前述した2007年のコメ騒動は、気候による不作が引き金となりましたが、コメの生産状況に関する情報共有が十分にされていれば防げたかもしれません。

実は、コメの生産量に問題はなかったものの、食糧市場の全般的な価格向上によりコメ価格の値上がりも懸念され、コメ生産国は輸出禁止に、コメ輸入国は大量買い付けに走ったため、需給バランスが崩れて価格が高騰したのです。

また、不安定な食糧価格への対策は、情報共有以外にも考えられます。災害に強い農作物の研究や作物貯蔵量の強化、農業保険の徹底といった施策を各国あるいは国際的な協力のもと強化していくことが必要です。

5.まとめ

飢餓に苦しむ人をゼロにするために、SDGsでは食糧生産を支える小規模農家の所得・平等性の改善に取り組んでいます。

小規模農家は世界の農産物の約8割を生産していますが、彼らの所得は低く、十分な肥料が使えないため生産性が低くなっています。

さらに、小農が多い低所得国では農産物貿易の赤字や食糧価格の変動から多大な影響を受けてしまいます。この状況を打開するには、先進国が先導して政策・支援を実施し、改善に取り組むことが求められます。

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