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大気汚染

歴史で学ぶ大気汚染公害の変遷

歴史で学ぶ大気汚染公害の変遷

大気汚染による公害にはどのような歴史があり、現在は何が課題となっているのでしょうか。

この記事では、大気汚染公害の歴史を詳しくご紹介した上で、現状の問題点や今後の展望についてお伝えしていきます。

1.きっかけは産業化

大気汚染の歴史は長く、14世紀のイギリスにまで遡ります。工業の発展による石炭使用の増加で空気が汚染され、1306年には公害と認定され、炉で石炭を炊くことが禁止されました。

しかし、時代は進み1700年代半ばから1800年代にかけて起こった欧州の産業革命によって、さらに石炭の使用が増加し、大気汚染は深刻化の一途をたどります。

日本でも1868年の明治維新以降、西洋諸国に対抗するために、工業や鉄道といった新産業を育成し、近代化を進める殖産興業が活発になったことで、欧州のように加速度的に大気汚染が進行しました。このように産業によって発生する大気汚染は「産業公害型大気汚染」と呼ばれます。

2.収束する産業公害型大気汚染

1900年代に入ると産業化が世界的に加速し、産業公害型大気汚染が進行しましたが、被害が顕在化したことで、法が整備され改善に向かいます。

その被害の実例と改善に向かった流れをご紹介します。

産業公害型大気汚染-海外の被害事例

例えば、1930年ベルギーのミューズでは、工場から排出された有害物質(亜硫酸ガス、硫酸、フッ素化合物など)により、60名が亡くなっています。死亡者以外にも全年齢層の人々が、急性呼吸器刺激性疾患などの疾患を患い、人間だけでなく家畜や植物も致死的被害を受けました。

他にも1952年の「ロンドンスモッグ事件」では、2週間で4000人、その後2ヶ月で8000人が死亡しました。死亡者以外にも全年齢層の人々に心肺系の疾患が多発し、入院患者が激増しています。

産業公害型大気汚染-国内の被害事例

日本の例では、1950年代から始まった高度経済成長の頃、鉄鋼や自動車などの重化学工業化が進み、大規模なコンビナートの増設に伴い、硫黄酸化物やばい煙が排出され、大気汚染による公害が増加します。

三重県の四日市市では、石油化学コンビナートが造られた1960年頃から喘息に苦しむ住民が増え、「四日市ぜん息」として歴史に残る社会問題となりました。

反対運動の活発化と法の整備

このように世界各国で大気汚染による公害が顕在化し、反対運動が盛んになります。イギリスでは、「ロンドンスモッグ事件」をきっかけに「大気洗浄法」が交付されました。

日本でも公害による健康被害を食い止めるため、1967年に「公害対策基本法」が成立し、1968年には、工場や自動車などから排出されるばい煙・ガスを規制する「大気汚染防止法」が成立しています。

産業公害型大気汚染は、産業革命や経済成長に伴い世界中で問題となりましたが、現在では各国が行った、法整備などの対策が功を奏し、着実に改善が進んでいます。

3.広がる都市・生活型大気汚染

産業公害型大気汚染は改善が進んでいますが、それに代わり、都市・生活型大気汚染が地球規模の問題となっています。

都市・生活型大気汚染とは、都市部への人口集中により自動車などの交通量が増加し、そこから排出される汚染物質によって大気が汚染されることを指します。

排出ガスに含まれる汚染物質NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)は、呼吸器に悪影響を与え、ガンとの関連性も危惧されています。

世界の急速な人口増加に伴い、各地で交通量が増加することはもちろん、エネルギー需要に比例して火力発電所が増設されるなど、都市・生活型大気汚染は急速に進行しています。

都市・生活型大気汚染によって二酸化炭素などの温室効果ガスが増大し、地球温暖化への影響も懸念されています。

産業革命前、世界の二酸化炭素濃度は約280ppmでしたが、気象庁によると2012年に400ppmを超える数値が日本で観測されました。また、IPCC第5次評価報告書(2014)によると、1880年から2012年までに世界の平均気温は0.85℃上昇したと観測されました。

4.大気汚染公害の今後

現在、都市・生活型の大気汚染について、先進国を中心に改善に向けた規制や基準強化を行っていますが、大きな成果を挙げるには至っていません。

先進国では再生可能エネルギーによる発電や電気自動車など、改善につながる技術開発が進んでいますが、まだまだ主力のエネルギーは化石燃料であり、都市・生活型大気汚染の根本的な改善には程遠い現状です。

特に人口が増加している東南アジアなどの発展途上国は、規制や基準も未発達であり、急速に大気汚染が進んでいます。これらの地域は経済成長の真っ只中にあるため、過去に先進国が経験してきたような産業公害型の大気汚染が問題となっている地域もあります。

また、日本の大気が中国の黄砂によって汚染されるといった「越境汚染」も問題となっています。

このように、大気汚染は一国の問題に留まらず、温暖化にも関わる地球規模の問題であり、一部の国だけでは解決できない問題です。

5.まとめ

「産業公害型大気汚染」は、14世紀のイギリスで既に問題視されていました。その後の産業革命による石炭使用の増加や経済成長による重化学工業化で、健康被害が各地で顕在化し、法整備などの対策が進みました。

その苦い歴史により、先進国では産業公害型の大気汚染は改善されましたが、今度は都市部への人口集中による「都市・生活型大気汚染」が進行しています。
都市・生活型大気汚染は、先進国を中心に対策が進められていますが、発展途上国の産業化や人口増加により大きな成果は挙げられていません。

大気汚染は、近隣地域による越境汚染や地球温暖化への影響など、国を超えた問題となっています。国や地域ごとに対策するのではなく、国際的な枠組みを定めて、世界各国が足並みを揃えて邁進することが、解決の糸口となるかもしれません。

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