屋外制御盤の必要冷却能力の計算方法
選定の基本ポイント
①赤枠内は屋内制御盤の熱量計算方法と同様に、下記の必要な情報を確認します。
(例)盤内推定発熱量、制御盤の有効表面積、最高周囲温度、希望設定温度など
→詳しくは「最適なクーラー選定の基本(熱量計算、必要冷却能力計算)」の記事をご覧ください。
②屋外制御盤の場合、直射日光の影響を加味する必要があるため、総日射侵入熱量を計算します。
(W)=相当外気温度上昇
(℃)×熱通過率
(W/m2・℃)×各面の表面積
(m2)
相当外気温度上昇(℃) は各面の日射量(W/ ㎡ )×( 太陽吸収率/ 筐体外表面熱伝達率(W/ ㎡・℃)) という計算式で求めることができます。
※太陽吸収率:表面の材質・色・透過率などで異なります。
※筐体外面熱伝達率:無風状態で約10W/㎡・℃、風速1~2m/s時で約15W/㎡・℃を目安。
※熱通過率 :板厚2mmの鋼鈑、約5[W/㎡・℃]となります。盤用熱関連機器工業会で5~6 W/㎡・℃と規定されています。
屋外制御盤の日射量(=総日射侵入熱量)は、設置される地域や時間、筐体表面の色/材質/厚み、筐体の構造(2重構造・日除け板の設置etc.)、周囲の通風状態などで変動します。
※ひとくち解説①を参照
例として下記条件の制御盤で計算してみます。
◎高さ2000mm、幅1000mm、奥行500mm
◎扉面南向き ◎東京地区、7月22日、快晴、14時、無風状態
◎板厚2mm、塗装色:ライトベージュ、壁面は1重構造
各面の日射熱量は計算式に当てはめて計算します。
各面の日射熱量を合計し、総日射侵入熱量は443.6Wとなります。
※屋外制御盤の熱量計算の詳細は、こちらをご覧ください。
※屋外制御盤の要冷却能力計算は、制御盤用クーラー機種選定ガイドで簡単に求めることができます。
ガラス面のある屋外サイネージ盤などの必要冷却能力計算
近年、屋外でのデジタルサイネージ広告が増えてきています。
それとともに、パソコンや液晶モニタなどの高温によるブラックアウトや故障リスクから冷却の必要も増してきています。
屋外の制御盤に制御盤用クーラーを利用する際の注意点をまとめました。
考え方1.必要冷却能力の計算方法は基本的には屋外制御盤と同様ですが、ガラス面は材質が異なるため日射侵入熱量が変わります。
・総日射侵入熱量(W)=相当外気温度上昇(℃)×熱通過率(W/㎡・℃)×各面の表面積(㎡)
・相当外気温度上昇(℃)=各面の日射量(W/㎡)×(太陽吸収率/筐体外表面熱伝達率(W/㎡・℃))
考え方2.ガラス面の日射量を推定し、修正する必要があります。
考え方3.ガラス面の太陽吸収率を推定し、修正する必要があります。
考え方4.ガラス面の筐体外面熱伝達率を推定し、修正する必要があります。
考え方5.その結果、相当外気温度上昇(℃)が求められます。
Let's Try!
参考手順1.ガラス面の日射量は、屋外制御盤の日射量を流用して算出します。
参考手順2.ガラス面の太陽吸収率を約0.7とします。
→0.7は透明ペアガラスと断熱ペアガラスの値の中間値。値はガラスによって異なります。
参考手順3.ガラス面の筐体外表面伝達率を約2.5(W/㎡・℃)とします。
→2.5は透明ペアガラスと断熱ペアガラスの値の中間値。値はガラスによって異なります。
参考手順4.上記から、相当外気温度上昇(℃)を求めます。
参考手順5.ガラス面の熱通過率を約2.0(W/㎡・℃)とします。
→2.5は透明ペアガラスと断熱ペアガラスの値の中間値。値はガラスによって異なります。
計算例
屋外の鋼板面とガラス面で計算結果を比較してみます。
※総合カタログおよびHPに例題としている屋外制御盤の西面(=523W)を基に試算してみます。
鋼板面の日射熱量(W)
523W×0.5÷10 (W/m2・℃) ×5 (W/m2・℃) × 1 (m2) ≒ 130.8W
ガラス面の日射熱量(W)
523W×0.7÷2.5 (W/m2・℃) ×2 (W/m2・℃) × 1 (m2) ≒ 292.9W
ガラス面と鋼板面での屋外での日射熱量は、約2.3倍となりました。
※上記の計算はあくまで目安となります。ガラスの材質や設置場所などにより実際とは異なります。
推奨目安
屋外のガラス面の日射熱量計算は、目安として約2.5倍以上を推奨します。
※上記は鋼板との比較となります。ガラス面以外の鋼板パネルの計算は、従来通りです。実際の推定冷却能力の計算では、安全率を考慮してください。