温度と半導体の故障率/電解コンデンサの寿命と周囲温度

半導体・アルミ電解コンデンサの故障と寿命の原因

半導体はダイオードやトランジスタ、IC 集積回路に代表され、電気回路の高速なスイッチとして、また電気の流れを一方向にだけ流す素子として、LED やレーザーのように電気を光に変換する素子として、さらに光を電気に変換する素子として、生産設備だけでなく私たちの生活になくてはならない電子部品です。
コンデンサは電気を充電・放電する電子部品で、電気回路では電圧の安定化、整流・ノイズの除去などのための非常に重要な電子部品で、電解コンデンサは特に電源回路、インバータに多く使われます。
半導体やアルミ電解コンデンサの故障と寿命の原因を考えてみましょう。

半導体の故障率と周囲温度

熱や温度は半導体素子の故障を加速します

右のグラフは半導体の温度ストレスによる寿命を予測する「アレニウスの法則」に基づく「半導体の温度と故障率の関係」を表したもので、縦軸は故障率です。
故障原因のひとつである変質は化学反応によって起こり、高温環境で加速します。グラフでは周囲温度40℃の故障率は 1ですが、60℃では10倍以上、80℃では100倍以上と飛躍的に故障率が増大することから、ダイオード・トランジスタおよび IC などの半導体部品が熱や温度に非常に弱いことが分かります。

半導体の周囲温度と故障率の関係

半導体の周囲温度と故障率の関係グラフ

運転中のサーボアンプの表面温度

アルミ電界コンデンサの寿命と周囲温度

寿命は周囲温度+10℃で 1/2、+20℃で 1/4 に

基板などの電子回路に必要不可欠な電解コンデンサ、電子機器の寿命はこのアルミ電解コンデンサの寿命で決まるといっても過言ではありません。
内部の電解液がゴム弾性体の中で浸透拡散する速度が10℃上昇すると2倍になることから、アルミ電解コンデンサの寿命加速度は「10℃2倍則」といわれています。グラフの一般的な電解コンデンサは、30℃の寿命が8万時間、40℃で4万時間、50℃では1/4の2万時間となり、60℃では実に1/8の1万時間の寿命予想となります。これがインバータやサーボアンプ・PLCの大きな故障原因となります。夏場の盤内温度は、周囲温度プラス20℃(寿命で1/4)近くになるので注意が必要です。

電解コンデンサの寿命の計算式

L=Lo×2^((T1-T2)/10)

Lo:基本寿命 T1:コンデンサ許容最高温度 T2:コンデンサの使用温度
(アレニウス化学反応速度一般式より)

電解コンデンサの寿命と周囲温度の関係

電解コンデンサの寿命の計算式グラフ

注)電解コンデンサで85℃2000hの寿命をもったものを部品のデータに基づいて作成。

ひとくち解説インバータの設計寿命とコンデンサの冷却の必要性

一般的にはインバータの使用周囲温度(制御盤内温度)は 50℃までとなっていますが、熱対策をしていない制御盤は夏場など外気温の高い時期には 60℃近い温度になることもあります。インバータの故障原因となる冷却ファンやアルミ電解コンデンサの想定温度(制御盤内温度)は 40℃が基準となっていますので、制御盤内を冷却して一定温度に保つことが重要です。
制御盤用クーラーは出荷時の温度設定は、余裕を考慮して35℃を基準にしています。

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