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自動運転に欠かせないAIの役割と課題について

自動運転に欠かせないAIの役割と課題について

2020年4月の道路交通法改正により、AIに運転を任せられるレベル3の自動運転が公道で解禁になりました。高速道路など決められた条件下でAIからの引継ぎ要請があれば運転操作を代わる必要はありますが、大きな一歩です。

身近なテクノロジーとして現実味を帯びてきた一方、自動運転機能の誤作動など、安全性への不安を感じる人もまだ多いようです。自動運転を制御するAIについて詳細な機能や学習方法があまり知られていないのも要因かもしれません。

そこで今回は、自動運転のAIが果たす役割と学習方法、自動運転におけるAIの課題と新技術などについて解説していきます。

1.自動運転にはAIの柔軟性が欠かせない

不測の事態が起こり得る公道では、柔軟に対応できる人工知能(AI)による自動運転の制御が欠かせません。

例えば、車を運転していると、道路を横断する歩行者や路肩に停めてある車両の他にも、段ボールなどの落下物や動物の飛び出しといった、思いもよらない障害物が目の前に現れる事態があります。

自動運転でAIを使用しない場合は人の手によって記述されたルールに従って判断を行うルールベースのプログラムを構築しますが、実際に起きるかもしれないすべての状況を想定してプログラムを組むのは非常に困難といえるでしょう。

一方、トレーニングされたAIなら、これまでの学習から分析や予測を行えるため、初めて目にするものでも正しく認識して回避行動をとるといった、フレキシブルな対応ができるようになります。

このことから、AIによる自動運転と、それを実現するための学習方法が注目されています。

2.自動運転で重大な「判断」を下すAIの学習方法

自動運転におけるAIの役割は大きく分けて認知・判断・操作の3つに分類されますが、なかでも最も重要なのが「判断」です。

実際の道路状況に基づいて適切な判断を下すためには、車に搭載されたセンサーが捉えた物体(オブジェクト)が歩行者か車か、正しく識別できなければなりません。そこでAIの画像認識を向上させるために、機械学習を用いたトレーニングが実施されています。

例えば人と車が写った画像のうち、どれが「人」でどれが「車」か、人間がそれぞれ特徴を入力して区別する学習を行います。これを膨大な回数繰り返すことで、やがて新規の画像に対しても推論を働かせて的確に見分けられるようになるのです。

さらに、人間による特徴の入力を自動化したものが深層学習(ディープラーニング)です。これは人の手を借りずに、AIが自ら特徴を見つけ出し、推論により区別する方法です。

これまで人間が見つけられなかった特徴も発見可能になり、画像認識の精度がさらに高まったため、今後、人や車の姿形が変わっても正しく認識できるのではないかと期待されています。

3.自動運転の実現に向けてAIが抱える課題

AIのトレーニングが自動化したことにより、完全自動運転の実現にさらに近づきましたが、一方で課題も出てきました。代表的な3つの問題について見ていきましょう。

不完全知覚問題

AIの「不完全知覚問題」とは、車に搭載されたセンサーでは限られた情報しか計測できないため、あらゆる状況をすべて識別することはできないのではないかという懸念です。

不足する情報を補う仕組みがないと、AIが状況を読み違えて誤った判断を下す可能性があります。過去にはAIが誤ってトレーラーの荷台部分を交通標識と認識し、荷台の下を通過しようとして事故を起こしたケースが報告されています。

切り替え問題

レベル3の自動運転ではAIが危険予測した時点でドライバーの手動運転に切り替わりますが、急な引継ぎに人間が対応できないのではないかというのが「切り替え問題」です。

本来は危険予測した時点で原因をドライバーに提示して、精神的な余裕を持たせながら手動に切り替えるのが理想的です。しかし、深層学習では推論過程がブラックボックス化するため、AIが危険を察知しても判断根拠をドライバーにうまく伝えられません。

AIから人へとシームレスな伝達方法を設けないと、事故を回避できない可能性が指摘されています。

トロッコ問題

AIの倫理的な課題としてよく取り上げられるのが「トロッコ問題」です。ブレーキの壊れたトロッコがそのまま進めば5人が犠牲に、コントロールすれば1人が犠牲になるという状況でどちらを選択するかという問題です。

こうした状況は、自動運転でも十分起こり得ると考えられます。例えば車のブレーキが故障した場合に、目の前の歩行者と衝突するか、あるいはドライバーを犠牲に壁へ衝突させるか、難しい選択を迫られるかもしれません。

このような意図的に人を轢くことを想定した学習には倫理的な問題があり、社会的にも受け入れられにくいものがあります。倫理に基づくAIの判断については、今後長い時間をかけて議論されるでしょう。

4.新技術との組み合わせにより実現に向かう自動運転のAI

AIによる自動運転には課題も残っていますが、新しいテクノロジーと組み合わせて技術的問題を克服しようとする試みもあります。その代表例が、エッジコンピューティング技術の応用によるデータ処理の分散化です。

AIによる自動運転では、処理の重いタスクはクラウドにデータを送信して処理を行い、その結果を車側で受信するというクラウドAI方式が検討されています。しかし、情報量の多いデータを送信するため莫大な通信量が課題になります。

また、データをクラウドにアップして処理し、結果を受信するまでに発生する数ミリ秒単位の遅延も問題です。衝突回避のような低遅延性が求められるタスクでは、この数ミリ秒の遅れが命取りにもなりかねません。

エッジコンピューティングはデータ収集元の端末となる車の近くにデータの処理や分析を行うエッジサーバーを設置することで、クラウドにアップする遅延を少なくし、リアルタイムでのデータ処理を実現します。

また、各エッジサーバーでデータの前処理を行うのでクラウドサーバーのマシンリソースを抑え、同時に通信量の削減も期待できます。

さらに、車にもスタンドアロンで学習や推論ができるエッジAIを搭載することで、通信インフラの構築や遅延といった問題に対処できると考えられています。

5.まとめ

自動運転の制御には不測の事態にも柔軟に対応できるAIが最適です。目の前に現れた障害物を的確に識別するため、これまでの学習から分析や推論を立てる機械学習と、その学習を自動化した深層学習がトレーニングに用いられ、AIは着実に進化しています。

しかし、センサーによる計測の限界を懸念する不完全知覚問題や、人間へのスムーズな情報伝達が求められる切り替え問題、だれかを犠牲にしないと解決できない場合の倫理的な対応を問うトロッコ問題といった課題も残っています。

課題はエッジコンピューティングやエッジAIなどの新しいテクノロジーにより、いずれ改善されるはずです。今後も自動運転技術の向上に期待が持てそうです。

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