tr?id=1146749789160402&ev=PageView&noscript=1
  1. HOME
  2. アピステコラム
  3. 開発途上国の平等な司法の普及と課題 SDGs~目標16.平和と公平をすべての人に~

アピステコラム

SDGs

開発途上国の平等な司法の普及と課題 SDGs~目標16.平和と公平をすべての人に~

開発途上国の平等な司法の普及と課題 SDGs~目標16.平和と公平をすべての人に~

いま世界では、開発途上国の人々が不平等な司法制度で危険にさらされていると問題になっています。

経済の発展度と犯罪は密接に関係しており、汚職、強盗、暴力、人身売買、麻薬犯罪などの多くは低所得国を中心に発生しています。また、犯罪は経済発展の大きな障害であるとも言われています。

社会制度が未発達な途上国において、人権を尊重する平和な暮らしを実現するためには国際協力が必要です。

今回は、公平な司法と犯罪撲滅をめざすSDGsと、開発途上国で起こっている犯罪とその原因、問題解決にむけた国際協力について解説します。

1. SDGs目標16「平和と公平をすべての人に」とは

SDGsとは2015年の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標です。持続可能な世界に変わるための17の目標と169個のターゲットで構成されています。

地球上の誰ひとりとして取り残さないと誓うSDGsの16番目の目標「平和と公平をすべての人に」では、公平な司法制度の普及と犯罪の撲滅をターゲットに掲げています。

中でも、特に犯罪の危険に脅かされている途上国の人々が、司法による十分な保護を受けられることを目指したターゲットが5つあります。

16-3:国家および国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16-4:2030年までに、違法な資金および武器の取引を大幅に減少させ、盗難された資産の回復および返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16-5:あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16-8:グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16-a:特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでのキャパシティ・ビルディングのため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。

教育や資金が不十分な開発途上国では、司法制度が十分に機能せず様々な犯罪が横行し国際問題に発展しています。途上国を含めたすべての人々が公平な司法のもとで平和に暮らすためには、国際協力が必要だとSDGsは訴えています。

2.開発途上国の未発達な司法制度が生む犯罪

2015年の「世界の犯罪と刑事司法の状況に関する国連の事務総長報告」には、低所得国の人々が安全と幸福を最も脅かされていると記されています。

貧困層の多さ、人権が軽視される未熟な社会制度、警察や司法の人材や資金の少なさなどから途上国では多くの犯罪が発生しています。

市民の自由と安全がなければ経済も教育も発展できず、貧しい状態がつづくと犯罪も減ることはありません。司法の改善は途上国の発展と強く結びついているのです。

暴力・殺人

世界全体の殺人事件は減少傾向にありますが、低所得国では増加しています。

国連薬物犯罪事務所による殺人発生率ランキングでは、中南米や南アフリカの低所得国が上位を占めています。不満が募りやすい貧しい地域では、怨恨や浮気、金銭トラブルなどを原因とした、顔見知りや身内による犯罪が圧倒的に多くなります。

窃盗

2005年に公表された国際犯罪被害実態調査による開発途上国の窃盗の平均被害率は、平均7.7%と日本の約26倍です。1位であるカンボジアのプノンペンと日本を比較すると43倍にもなります。

また、国内の犯罪だけでなく、国際的な窃盗団による盗難車の不正輸出先は中東や南アフリカ地域が多いと報告されており、世界的な犯罪の受け皿にもなっています。

汚職・賄賂

2017年のトランスペアレンシー・インターナショナルによる世界の汚職ランキングでは、ソマリアを筆頭に南スーダン、シリア、イエメンなど、紛争や経済混乱が続く中東・アフリカ地域、東南アジアの国々が上位に並びます。

政治や警察に汚職や賄賂がはびこる状況では、税金の分配は不平等になり、公平な司法や健全な経済活動も望めません。

組織犯罪・麻薬

薬物や武器の取引、人身売買、違法な資金の洗浄などを行う国際的な組織犯罪は、司法が弱い途上国を拠点にしています。

黄金の三角地帯と呼ばれる麻薬産地のミャンマー、タイ、ラオスに、コロンビアの人身売買、象牙や希少な植物などを密猟・採取するアフリカの野生生物犯罪など、いずれも深刻な犯罪ばかりです。

テロリズム

違法な資金や武器が流通しやすい途上国は、国際的テロ組織の拠点としても知られています。

アルカイダやボコハラムなどが有名な中東・アフリカ地域の他、アジア地域にも国際テロ組織が増えており、フィリピンのISLS東アジアや新人民軍などの活動も警戒されています。

3. 不平等な司法制度が生まれる原因

SDGsのターゲット16-3では、「国家および国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。」としています。

汚職や賄賂がはびこる開発途上国では、公正な選挙が実施されない、立法や行政の監視が機能しない、民主制の基盤になるジャーナリズムの自由も確保されないなど、「法の支配」に多くの課題があります。

このような司法の弱さから、紛争問題に公平・公正な解決ができず、経済を支えるための法整備も不十分な状況が続いています。政策の実施においても非効率で不透明なプロセスとなり、市民に不満と不信感を与え、国の発展を大きく妨げる要因になっています。

人材も資金も不足している開発途上国が変わるためには、グローバル・ガバナンス機関への参加が不可欠です。

グローバル・ガバナンス機関とは、世界の問題に対して共通ルールを作り、政策を実行する国際協力組織のことであり、国際機関や各国政府、民間NGOや企業など幅広い立場の団体が協力し合い、国の安定や民主的発展に向けて地域のニーズに合わせた形で援助する仕組みになっています。

国際通貨基金(IMF)、国際復興開発銀行(IBRD)、国際金融公社(IFC)など、世界の貧困減少のために投資や支援策を打ち出す国際協力機関は数多くあり、国連では途上国の事情や意見を反映するために積極的な加盟を促しています。

4.開発途上国の司法を強化するキャパシティ・ビルディングとは

開発途上国は麻薬組織やテロリズムなど国際的な犯罪組織の拠点となりやすく、途上国の犯罪撲滅は世界全体の問題です。SDGsは途上国自身の司法能力を強化させる支援方法として、キャパシティ・ビルディングを推奨しています。

キャパシティ・ビルディングとは、組織の能力づくりや基礎体力の向上、構築を指しており、司法の分野では、途上国の法令作りや人材育成に焦点を当てた支援がされています。

例えば日本の法務省では、要請を受けた開発途上国の法令整備と確実な運用のために以下のような国際協力活動を行っています。

・対象国の司法関係者を招いた日本国内での研修
・現地セミナーへの講師や教官の派遣
・日本の大学教授や法律実務家などによる法律案の起草やアドバイス
・裁判官出身検事など、アドバイザー型専門家の長期現地派遣

その他にも国際シンポジウムの開催や研究活動を行い、ベトナム、ミャンマー、バングラデシュなど多くの途上国の法整備に貢献しています。

SDGsは途上国と世界全体の発展のため、すべての人々が公平な司法を受けられる社会のために、国際協力をしようと呼びかけているのです。

5. まとめ

開発途上国のような低所得国では、資金と人材の不足から司法が機能しておらず、暴力や汚職、組織犯罪やテロリズムなど様々な犯罪が発生し、経済発展の大きな妨げとなっています。

世界の平和と公平を目指すSDGsの目標16では、途上国の司法制度を支援するために、途上国の意見を反映し、援助するグローバル・ガバナンス機関への参加を促し、先進国には、途上国自身の司法能力を構築するキャパシティ・ビルディングによる法整備支援を呼びかけています。

開発途上国の司法の強化は、国際犯罪の撲滅や世界経済の底上げにつながります。人材育成や経済発展など将来を見据えた支援策が求められています。

アピステコラム一覧
生産性向上・環境改善に役立つ情報をお届けします。 メルマガ登録

お客様のご要望に
スピーディにお答えします。

TEL0120-945-354 FAX0120-997-589

電話受付:月~金曜 午前9時から午後5時30分まで。土・日・祝および当社休業日は受付しておりません。FAX:24時間受付。