恒温恒湿

恒温恒湿とは?

ある目的のために長時間、温度を一定に維持することを恒温といい、さらに温度・湿度を一定に維持することを恒温恒湿といいます。
大学や研究所、工業製品の開発・評価などに多く使われているものが恒温槽、恒温恒湿槽です。槽とは、箱型の容器のことをいいます。

恒温恒湿環境の目的、理由

恒温恒湿環境は、なぜ必要なのでしょうか?
考えられる目的や理由を製造プロセスと研究開発に分けて上げてみます。

製造プロセス

  • 温度・湿度が一定であると、品質が安定する。
  • 温度・湿度が一定であると、生産が安定し、タクトタイムが短縮する。
  • 温度・湿度が一定であると、歩留まり率が向上する。
  • 製造工程中の製造条件のトレーサビリティが明確にできる。

研究開発

  • 要素技術とデータの相関比較を行なうために、環境は同じにする必要がある。
  • 原材料の状態や性質を同一にするために、保管状態を同じにする必要がある。
  • 材料試験などの物性試験は、同一環境で実施する必要があり、JISなどで規定されている。
  • 研究開発データから量産条件を絞り込み、最適な条件を抽出する必要がある。

このように、製造プロセスや研究開発においても製品の品質や性能を保証し、基礎研究を着実に進捗させるためにも、恒温恒湿環境を整えることは大変重要なのです。
また、製品の最終性能を試験するために恒温恒湿に温度上昇や温度下降を繰り返す環境サイクル試験も重要です。

恒温恒湿装置の種類

恒温槽を中心とした恒温恒湿装置には、以下のような種類があります。

恒温槽・恒温恒湿槽

恒温槽とは、箱型の容器で内部は温度・湿度が一定になる構造になっている装置で、外部からの温度変化の影響を防ぐ構造になっています。
箱型よりも大きいものは恒温室と呼ぶこともあります。
温度だけを一定にするものを恒温槽、温度・湿度を一定にするものを恒温恒湿槽と区別することもあります。

環境試験器・環境試験室

さまざまな温度・湿度などの気象条件を擬似的に再現し、その中で起こる変化を測定する試験器です。
腐食などに対する試験を行うこともあります。

恒温水槽

おもに水槽内の水をヒータで加熱して一定の温度に保つ装置で、温度分布が空気より安定しています。
水温設定は、室温+数℃~100℃までの間で、さまざまな試験や分析などに使用されます。

恒温乾燥器

ヒータと循環ファンで槽内の温度を一定にする乾燥用の恒温器です。
幅広い温度帯があり、さまざまなプログラム機能があります。

インキュベーター

語源は保育器で、医薬や理化学の研究分野で多く利用されています。培養や保存などに利用されています。
低温機能のものはクールインキュベーターと呼ばれています。冷蔵庫的なものです。

環境試験機

その中で材料に起こる変化を測定する試験機です。温度・湿度以外に気候や腐食に対する試験機能を持つ試験機もあります。
環境試験には、具体的に環境サイクル試験、温度サイクル試験、温湿度サイクル試験などがあります。

<温度サイクル試験>

温度変化や温度変化の繰返しが、部品や機器またはその他の製品に与える影響を確認すること。(JIS 0025)

<温湿度サイクル試験>

恒温と低温の温度差を繰り返し与え、温度変化と湿度に対する耐性を短時間で評価する。(JISC 60068)
日本は南北に非常に長く、地域による寒暖の差が大きいです。
四季によっては梅雨や高温多湿の夏、猛暑から、厳しい冬とさまざまな気候や環境に左右されるため、製品への影響や耐久性を試験することが必要です。

簡易的で、精密な恒温恒湿ルーム

環境試験室や恒温恒湿ルームを備えた試験室・評価室を導入設置するには、しっかりとした基礎の上に建設する必要があります。また、ユーティリティも整える必要があり、一度設置すると簡単に移設は困難です。
本格的になるほどイニシャルコストも膨大になり、製造現場には簡単に設置ができません。

そこで、希望される現場やフロアに簡易的に精密な恒温恒湿ルームを実現できる精密空調機のご提案があります。