クリーンルーム

空調の4要素

空調とは、空気の条件をその空間の用途や目的に合わせて、適した状態に調整することで、そのために温度・湿度・清浄度・気流の4つの要素を調節し、均一で適切な室内環境を実現しなければなりません。

一般空調環境での環境基準

日本国内では、さまざまな法律によって国民の健康を守るための快適な空気環境が定められています。以下のように一般空調下においても、温度・湿度・清浄度・気流の管理目標は数値化されています。
例)建築物衛生法、建築基準法、ビル管理法、労働安全衛生法など

捕集効率

一般空調環境の清浄度

また、一般空調環境での清浄度は室内などの対象空間の粉塵・ハウスダスト・花粉などの浮遊粉塵やホルムアルデヒドなどのアレルギー源となる化学物質、嫌な臭いなどを取り除くことが求められます。

製造プロセスにおける清浄度

製造プロセスにおける清浄度は一般的にクリーン度と呼ばれ、一定の基準に基づき対象空間内の空気の汚れ度合いを表し、クリーン度クラス〇〇と表現します。このように、クリーン度(清浄度)を実現し、管理された部屋をクリーンルームと呼びます。

もともとクリーンルームは、半導体・電子部品などの製造プロセスが微細な粉塵粒子や不純物の混入・付着を極端に嫌うことから規格化されたものですが、今では精密機器・精密部品の加工や組立、医薬品・医療機器など幅広い分野にまで広がり、プロセスのコンタミネーション対策として、また感染症対策としても利用されています。

クリーンルーム

クリーンルームは、以下のように定義されます。

空気中の浮遊微粒子、浮遊微生物が限定されたレベル以下の清浄度に管理され、不純物や異物を持ち込まないようにコンタミネーションコントロールが行われている部屋で、室内に持ち込まれる製品、薬剤、水なども清浄度が保持され、快適な作業環境のために必要に応じて温湿度や圧力、気流などの環境条件についても管理が行われている空間です。

(参考:JIS Z 8122

クリーンルームは使用目的により、大きく2種類に分類されます。

インダストリアルクリーンルーム

おもに半導体・液晶・電子部品・精密機器などの工業分野向けで、空気中の浮遊粒子が対象です。

バイオロジカルクリーンルーム

おもに医薬品・遺伝子工学・バイオ・手術室などの医療食品分野向けで、空気中の浮遊微生物が対象です。

コンタミネーション

コンタミネーションとは、製品や食品などに異物・不純物・微生物などが混入する、汚染されることを言います。コンタミネーションが発生しないように管理することをコンタミネーションコントロールと呼んでいます。

製造工程では、機械装置・搬送機などの周辺環境から、金属片・異物・不純物・汚染物質などが発生し、製品に混入したり、付着することがあります。特にクリーン環境の管理が厳しい半導体・電子・精密部品・医薬品や食品製造分野では、ロットアウトやリコール回収などの大きな損失や信頼喪失になりかねません。

そのための対策には、以下のことなどが考えられます。

  • 部材を見直し、コンタミを起こしにくい仕様に変更する。
  • 洗浄を徹底する。
  • 洗浄方法を見直す。
  • 専用の器具を使用する。
  • 検査を徹底する。
  • 特定物質が混入しないように工程を見直す。
  • 社員教育を徹底する。

クリーン規格とクリーン度(クラス・清浄度)

クラス(清浄度)とは、空間中の微粒子がどのくらいの量なのかの度合いを規格により定めたものです。現在は国際統一規格のISO規格へ統一されてますが、従来からの米国連邦規格「FED-STD209D]が現在でも広く使用されています。JIS規格は基本ISO規格に準じています。

ISO14644-1 (JIS B9920)
1立法メートル当たりの空気中の0.1μm以上の粒子が対象で、クラス1-9まで分類されています。JIS規格もISO規格と同様に、1立法メートル当りの0.1μm以上の粒子の個数でクラス1-8まで分類します。
FED-STD-209D
1立方フィート(1フィート=約30cm)当たりの空気中の0.5μmの粒子の数でクラスが分類されています。

クリーン度測定

クリーンルームの空気清浄度の評価方法は、JIS B 9920に規定されています。一般的には、パーティクルカウンタを使用して粒子径ごとに粒子数を計測します。

<注意点>
パーティクルカウンタを使用する際には以下の点に注意が必要です。

  • 粒子径、吸引流量、測定対象の清浄度が目的に合っている。
  • 粒子数は多い方が精度が良くなる。
  • 粒子数が多すぎると誤差が大きくなる。
  • 仕様より小さい粒子を計数すると誤差が大きくなる。

クリーン度とエアフィルタ

対象空間のクリーン度(清浄度)を満足させるためには、空気中の浮遊粒子をろ過するエアフィルタがなくてはなりません。エアフィルタには、捕集効率のよって以下のように大別されます。HEPAフィルタに近い中高性能フィルタを準HEPAフィルタと呼ぶこともあります。

FFU(フィルターファンユニット)
HEPAフィルタとファンモータを合体したクリーンエア装置をFFUと呼んでいます。

HEPAフィルタは、High Efficiency Particulate Air Filterの略で、JIS規格で以下のように定められています。

定格風量で粒径が0.3 µmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター

(参考:JIS Z 8122

ULPAフィルターは、Ultra Low Penetration Air Filterの略で、JIS規格で以下のように定められています。

定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ

(参考:JIS Z 8122

捕集効率

空気中の浮遊粒子や汚染物質を除去するためには、捕集対象の粒径に適したフィルタの網目の細かさが必要となります。捕集効率とは、流入してくる浮遊粒子をフィルタでどれくらい捕捉できるかの割合となり、捕集効率に高さによってクリーン度(清浄度)が変わってきます。ただし、フィルタの性能区分によって捕集効率の計測方法が異なるため、同じ数値の捕集効率でも必ずしも同じとはいえないので注意が必要です。

質量法

フィルタで捕集した質量÷フィルタに流入した総質量
⇒質量法は、細かな粒子は捕集できなくても、大きな粉塵(粗塵)を捕集すれば捕集効率が高く算出されるため、一般的には粗塵フィルタの計測方法となります。

計数法

フィルタで捕集した粒径ごとの粒子数÷フィルタに流入した粒径ごとの粒子数
⇒計数法は、ほこりや浮遊粒子の粒径ごとにどれくらいフィルタで捕集できたかを粒子の数をカウントして計測するため、HEPAフィルタなどで用いられる評価方法となります
そのため、HEPAフィルタの仕様には「0.3μm粒子にて99.97%以上」などと記載されています。

<注意点>
HEPAフィルタやULPAフィルタは捕集効率が高い反面、浮遊粒子やほこりが多い場所で使用すると、フィルタ自体の目詰まりが早くなり、急激な風量低下のため、フィルタの交換周期が早くなるので、使う場所やプレフィルタとの併用などを検討する必要があります。

フィルタ圧力損失

フィルタは浮遊粒子やほこりを捕集するため繊維質の網の目構造になっています。そのため、フィルタを通る空気の流れを妨げる抵抗となります。ある風量の空気の静圧がフィルタを通過した時に低下する圧力差のことをフィルタ圧力損失といいます。
フィルタ通過前の空気の静圧-フィルタ通過後の空気の静圧
⇒圧力損失は、微差圧計で測ることができます。

<注意点>
フィルタ圧力損失は、新品の状態を初期圧力損失と呼び、運用する時間とともにフィルタが目詰まりし、徐々にフィルタの圧力損失は大きくなり、捕集効率の低下や風量の低下の原因となります。また静圧の弱いファンモータの場合、圧力損失の大きなフィルタを使用すると希望の風量がでない原因になるため、注意が必要です。

クリーン度を維持するためのクリーンルームの4原則

クリーンルームのクリーン度(清浄度)を常に維持するためには、まず「クリーンルームの4原則」の遵守が基本となります。

  • 持ち込まない
    ⇒作業者、繊維くず、毛髪、台車、装置、金属片
  • 発生させない
    ⇒作業者、衣服、備品、筆記用具、摺動部、搬送、加工、塗装
  • 堆積させない
    ⇒清掃方法、角ばった場所、凹凸部
  • 排除する
    ⇒換気回数、換気方式、デッドゾーン、陽圧

クリーンルームにおける換気回数と必要風量

換気回数は、1時間当たりに対象空間の空気を何回入れ替えられるか(=換気)をいいます。インダストリアルクリーンルームの場合、プロセスによって要求されるクリーン度から換気回数も異なります。クリーン度の高いプロセスほど、換気回数が多くなります。
換気回数の求め方は、
1時間当たりの換気回数(回/h)=平均気流速度(m/sec)×吹出し面積×3600秒÷空間容積(m³)

平均気流速度もプロセスによって異なりますが、まずは標準的な気流速度0.4m/secで考えます。

換気回数が分かれば、必要風量が求められます。
必要風量(m³/min)=空間容積(m³)×換気回数(回/h)÷60(min)

インダストリアル系クリーンルームの気流設計の目安

クリーンルームの気流速度は、JIS規格では0.2m/s以上を推奨していますが、クリーン関連機器メーカーはおおよそ0.3~0.4m/sの気流速度で選定することが多いようです。アピステの場合は、0.4m/sに設定しています。

<注意点>
換気回数が少ない場合でも、HEPAフィルタでろ過すると、当初はクリーン度(清浄度)は達成できますが、HEPAフィルタの目詰まり経年劣化により、粒子濃度や汚染濃度の上昇、清浄度回復能力の低下などのリスクが高まり、知らないうちにクリーン度が規格から外れている場合が発生します。

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