チラーの配管とは?配管部材や特徴

『チラー便覧2』を読む

レーザー加工機や高周波加熱装置のような、大きな発熱を伴う装置の冷却に「チラー」と呼ばれる冷却水循環装置が使用されます。

冷却器内を循環させた冷水を連続的に供給し、機械から発生する熱を抑え、一定に保つ機能があります。また、必要に応じて温度を上げる目的で使用することも可能です。

今回は、そんなチラーの配管の仕組みや配管部材の持つ特徴をご紹介していきます。

目次

1.チラーの配管とは

チラーは、水を急速に冷やす冷凍回路と、供給するための水をストックする水槽、さらにそれらを接続する配管で構成されています。

配管の役割は、それぞれのパーツを接続し、確実に冷却水を設備に運ぶことですが、使用目的や規模に応じた配管を選ぶ必要があります。

配管とは

そもそも配管とは、気体・液体・粉体といった流体を通す管状の部品を配置することであり、使用目的によってさまざまな形状・材質のものが存在しています。

「配管」という単語は、管の部材そのものを指すこともあれば、「水道の配管を行う」といったように、管を通したり張り巡らせたりする動詞としても使用されます。

配管の部材は、私達の身近にある水道用のホース、エアコンのダクトホースといったものから、石油などを輸送する大型のパイプラインや化学プラントのユーティリティ配管、地下を走る上下水道の土管なども含まれます。

この記事では、液体を輸送し冷却するための配管を中心に説明します。

配管のサイズと最大流量

配管のサイズで重要なのは内径です。これによって配管内を輸送できる最大流量も変わってきます。

配管のサイズには、「A呼称」、「B呼称」、「通称(俗称)」といった3つの呼び方があり、「A呼称」はミリメートル寸法、「B呼称」はインチ寸法になっています。

「通称(俗称)」は現場で昔から使われている呼び方で、B呼称の1/8の部材を一分(いちぶ)、3/8の部材を三分(さんぶ)などと表します。

最大流量とは、流量計で正確に計測できる最大値のことであり、安全に装置を使用するために欠かせないものです。一般的に配管の内径と流速によって変動し、下記の公式で求められます。

Q(流量) = (D(内径) / 2)^2×π×V(流速)

Q は流量、Dは内径、πは円周率、Vは流速を表しています。円周率の部分は内径の断面積を求める式ですから、仮に断面積をMとすれば、式は下記のように整頓されます。

Q(流量) = M(断面積) × V(流速)

仮にQ(流量)を10で固定した場合、M(内径)が10であれば流速は1に、M(内径)が1であればV(流速)は10になることがわかります。適切な配管内の流速は2.0m/sを超えないようにすることが一般的ですが、仮に流速3.0m/sであっても条件によっては循環可能です。

国内生産の配管は通常JIS規格で作られていますが、輸入配管はANSI規格の外形寸法で生産されていることがあります。

この場合、最大流量等に問題がなくても設置上の問題が生じるおそれがあるため、事前に確認することが重要です。

2.配管の種類と特徴

配管と同じように流体を移動させる部材にホースがあります。ゴムやビニル、プラスチック製が多く、自在性が高い反面、耐久性・耐圧性が劣るという特徴があります。

この記事では、ホースを除く固形の配管を中心に記載しています。

金属管

炭素鋼鋼管やステンレス鋼管、非鉄金属である銅管やアルミパイプが該当します。

炭素鋼鋼管は、炭素を含んだ合金で作られており、最も安価で多くの配管に使用されています。耐食性に優れたメッキ加工や、耐圧性能が高いシームレス製造など用途に合わせた加工がされています。

ステンレス鋼管は、SUS鋼管とも呼ばれ、クロムを10.5%以上含んだ合金鋼で、錆に強く給湯や冷温水といった水場で多く使用されます。

非鉄金属の代表はアルミパイプですが、こちらは熱伝導率が高く、軽く、錆びにくいというメリットがあり、熱交換器や船舶の部品などに多く使われています。アルミニウムの純度が高い程、強度が低いという特性があります。
また、同じく非鉄金属の銅管は、柔らかく加工しやすいことに加え、熱伝導率や耐食性に優れていることから、給水・給湯管や空調配管、医療ガス配管などに使用されます。

樹脂管

硬質塩化ビニル管や架橋ポリエチレン管、ポリブデン管などが該当する樹脂管は、軽量で接続・切断が容易なため取り扱いやすく、耐薬品性にも優れ、工場よりも水道設備や住宅用途として採用されることが多い配管部材です。

金属管と同じく高い汎用性が特長で、耐震性・腐食性に優れているほか、スムーズな内面により流体が通過しやすいという特性を持っています。

ライニング管

耐久性の優れた金属管に、高い耐腐食性を持つ樹脂素材をライニング(接着)したものがライニング鋼管と呼ばれる配管です。

ライニングする樹脂素材には塩化ビニルやポリエチレン、ノンタールエポキシなどがあり、上水道や消火栓などに広く採用されています。

3.配管の接続方法と特徴

チラー設置は、対象となる工場や施設によってさまざまなパターンが考えられます。機械から発生する熱を効率的に冷却するには、適切な配管が必要となります。

そのためには、用途に合わせた接続方法が求められます。では、管を接続する方法と特徴を見ていきましょう。

ねじ込み接続

もっとも一般的な接続方法のひとつが「ねじ込み接続」です。接続する管を雄ねじと雌ねじで結合するタイプで、比較的簡単に接続できる反面、ねじが緩む、流体が漏れやすい、といった欠点があるため、高圧の用途には向いていません。

チラーの場合、流体が水であるため継ぎ目に生じた隙間には液状シールかシールテープを用いることが一般的です。シールテープは、必ず時計回りになるように巻きます。

フランジ接続

フランジ接続は、フランジと呼ばれる板同士をネジで結合することで高い強度と作業性を実現した接続方法です。

最大のメリットは、一度設置した配管であっても、容易に分解が可能な点で、問題が生じた場合でもピンポイントで点検・メンテナンスを行うことができます。

溶接接続

溶接接続は、配管同士を溶接によって直接接続する方法であり、高温高圧下のパイプラインなどで用いられます。接合部分を溶接しているため高圧の配管にも使用することができます。

メス形のソケットに配管を差し込み、接合部分を溶接する「差し込み溶接」と、同サイズの配管を突き合わせて接合部分を溶接する「突き合わせ溶接」があります。

接着接続

接着接続は、給排水などに使用する樹脂管などを結合する際の接続方法です。配管の材質に応じた接着方法を行います。

ポリエチレン製配管の場合は、熱で接着する「融着」という方法もありますが、水道管などの一般的な塩ビ管であれば接着剤を使用します。

ただし、接着剤の使用量には注意が必要であり、量が少なければリークの可能性があり、多すぎれば配管の耐久性に問題を生じる恐れがあります。

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4.覚えておきたい専門用語

最後に、チラー配管について知っておくと便利な専門用語を解説します。

シール

シールは、配管の接続部分からの水漏れを防ぐために使用される部材です。液状、テープ状のものがあり、配管の内径が「A呼称」で50を超えるような大口径サイズの場合は、通常、液状シールが用いられます。また、配管同士が接着する面をシール面と呼びます。

リーク

リークとは「漏れ」を表すもので、配管においては「配管の漏れによる内容流体の流出」を意味します。現場では「この接続はリークしにくい」などと使用されることがあります。配管の漏れを確認するテストをリークテストと言います。

リークテストの方法には、液没法、圧力変化法、流量測定法などがあり、設置状況によって最適なテスト方法を採用する必要があります。

ウォーターハンマー

配管内の急激な流速変化により管内圧力が上昇・下降する現象をウォーターハンマーと言います。

ウォーターハンマーが発生する状況は2種類あり、ひとつは流れている流体を急にせき止めることで圧力が高まり、配管を振るわせる加振力により衝撃音が発生するケース。

もうひとつは、流速を発生させていたポンプなどが止まることで圧力が低下し、水柱分離(気相発生)が起こり、その水柱同士が圧力回復により衝突し、衝撃を発生させるケースです。

水道の蛇口を急に開閉したときなどに「カン」と鳴るのもウォーターハンマーの一種です。

シール

シールは、配管の接続部分からの水漏れを防ぐために使用される部材です。液状、テープ状のものがあり、配管の内径が「A呼称」で50を超えるような大口径サイズの場合は、通常、液状シールが用いられます。また、配管同士が接着する面をシール面と呼びます。

圧力損失

流体が配管内を通るとき、内壁との摩擦などにより流速が落ち、結果として流量が減少してしまうことを圧力損失と言います。圧力損失には主に2種類の原因があり、壁面との接触による摩擦損失と、渦や乱流による乱れ損失に分けられます。

圧力損失を考慮せずに設計すると、想定通りの流量が確保できないため、生産性に大きな影響を及ぼすことも考えられます。

キャビテーション・エロ―ジョン

配管内もしくは貯水タンク内などの流体の圧力が低下したとき、小さな気泡が多数発生することがあり、これをキャビテーションと呼びます。

この泡は圧力が回復し消失する際に非常に大きな衝撃圧を発生させ、配管などの表面を傷つけ、壊食が発生することがあります。これをエロージョンといい、一連の物理現象を「キャビテーション・エロージョン」と称しています。

キャビテーションが発生する要因としては、液体内の不純物や流速、乱れ、圧力のほか、液体の持ち物性(粘性や圧縮性)なども影響するとされています。

5.まとめ

水冷式チラーに用いられる配管は、一般家庭内から、上水道や消火栓、工場内の設備など身近に使用されているものです。

金属管や樹脂管、ライニング管といったさまざまな種類の配管が、特性に合わせた接続方法によって目的ごとに使い分けられています。

また、チラーの配管を設置するにあたり「シール」や「リーク」、「ウォーターハンマー」など、知っておくと便利な専門用語もあります。

水冷式チラーの導入を検討している場合は、ぜひご参考頂ければ幸いです。

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