チラーの仕組みをわかりやすく解説!基本原理と導入のメリットも紹介

「新しく導入する設備に冷却水を供給しなければならない」
「製品の品質を安定させたい」
「工場の機械が熱で止まってしまう」

このような産業用機器の冷却に関する悩みは、製造現場でよくある課題です。こうした課題を解決する装置が、「チラー(冷却水循環装置)」です。

チラーは大別すると「設備用」と「空調用(ビル・建屋)」の2種類があります。
この記事では、「設備用チラー」に焦点を当て、初心者の方にもわかりやすく、基本的な仕組みや構造、冷却方式、選定時のポイントまでを丁寧に解説していきます。

自社でチラー導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1.チラー(冷却水循環装置)とは?

チラーは、製造現場で機器や工程から発生する熱を冷却し、安定稼働を支える装置です。ここでは、チラーの役割や活用される産業分野について解説します。

チラーの基本的な役割

多くの産業機械や製造工程では、稼働中に熱が発生します。発生した熱を十分に冷却できないと、機械内部の温度が上昇し、誤作動や性能の低下、さらには故障の原因となるおそれがあります。また、加工中の製品や材料の温度が変化することで、品質に悪影響を及ぼす場合もあります。

チラーは、一定温度にコントロールされた液体(水・不凍液・純水など)を循環させて、そうした熱を効率的に除去する装置です。

適切な冷却によって、設備の安定稼働や製品の品質維持、生産効率の向上につながります。

チラーが活躍する産業分野と具体的な用途

チラーは、その精密な温度制御能力から多種多様な産業分野で活用されています。主な産業分野とその具体的な用途を、以下の表にまとめました。

産業分野主な用途(装置)具体的な冷却・温度管理の対象)
製造業 ・工作機械(切削、研削など)
・射出成形機
・レーザー加工機
・ミキサー・粉砕機
・主軸、工具、ワークの冷却、クーラント液、油圧ユニットの温度管理
・金型の冷却、油圧作動油の冷却
・レーザー発振器、光学系の冷却
・装置本体の冷却
食品・飲料 ・食品加工、包装機械
・食品、液体の温調
・加熱撹拌機の冷却、包装機のシールバーの冷却
・クラフトビールの熟成タンク、発酵タンクの温度管理
加工工程における温度管理
半導体・電子 半導体製造装置 ・ウェーハチャックの温度制御
・プロセスガス、薬液の温度調整
・真空ポンプの冷却
医療・医薬 ・医療画像診断装置(MRI・CTなど)
・医薬品製造装置(反応槽・混合槽)
・装置内部の発熱部位(磁石、制御回路など)の冷却)
・原薬・試薬の反応温度管理、結晶化工程の冷却(品質の再現性維持)
理化学 分析機器、研究設備 ・分析機器の安定稼働と性能維持
・実験における温度制御と再現性確保

このように、さまざまな産業分野の工場・生産ラインで、多岐にわたる用途で活用されています。

2.チラーの原理と構造

チラーは、対象設備に冷却水を供給し、対象から熱を奪い、さらに冷却を行う装置です。設備用のチラーの場合は、冷凍サイクルとタンクとポンプが一体になった構造をしています。

その原理と構造を3つのポイントで解説します。

  • - 冷凍サイクル(冷却回路)とは
  • - 空冷式と水冷式
  • - タンクありとタンク無し

チラーの冷却原理は、冷媒を循環させて冷却する冷凍サイクルに基づいています。

チラーの冷凍サイクル(冷却回路)とは

チラーの核心となるのが「冷凍サイクル」です。冷凍サイクルとは、冷媒が

  • - 蒸発器で熱を吸収し、
  • - 圧縮機で高温・高圧ガスに圧縮され、
  • - 凝縮器で外部に熱を放出して液化し、
  • - 膨張弁を通って低圧に戻る、

という一連の循環プロセスを指します。

チラーの冷凍サイクル(冷却回路)

このサイクルを繰り返すことで、冷媒は常に「熱を取り込み、外へ運び出す」役割を果たします。これがチラーが対象物を冷却することができる基盤です。

チラーの冷却の仕組み

チラーは冷却対象に循環水を供給することで対象物を一定の温度に保ちます。
その仕組みは、冷却対象から熱を受け取る「冷水回路」と、受け取った熱を外部へ運び出す「冷凍サイクル(冷媒回路)」を組み合わせることで成り立っています。 この二つの回路が連動することで、装置は安定して冷却されます。その流れをステップごとに整理すると以下の通りです。

1. 熱の吸収(冷水回路)
冷却対象(レーザー加工機、射出成型機など)で発生した熱を循環水が吸収し、水温が上昇します。

2. 熱交換(蒸発器)
温まった循環水は蒸発器に送られ、冷媒と熱交換します。冷媒は水から熱を奪って蒸発し、循環水は再び低温に戻されます。

3. 冷媒の循環と放熱(冷凍サイクル)
蒸発した冷媒ガスは圧縮機で高温・高圧の状態に変換され、凝縮器に送られます。凝縮器では外気(空冷式)や冷却水(水冷式)を利用して熱を外部へ放出し、冷媒は液化します。液化した冷媒は膨張弁で減圧され、再び蒸発器へ戻って熱を吸収する準備を整えます。この循環こそが「冷凍サイクル」であり、熱を連続的に外部へ運び出す仕組みです。

4. 冷水の再供給
冷却された循環水は再び装置へ供給され、継続的に熱を取り除きます。

このように、チラーは「冷水が装置から熱を運び出し、冷媒がその熱を外部へ搬出する」という二重構造で成り立っています。冷凍サイクルがあるからこそ、冷水は繰り返し冷やされ、装置の安定稼働が実現するのです。

空冷式と水冷式

空冷式チラー

空冷式チラー

水冷式チラー

水冷式チラー

引用:チラー(ユニットクーラー、冷却水循環装置)

チラーの冷却方式は、冷媒が奪った熱をどのように外部へ放出するかによって「空冷式」と「水冷式」に分かれます。どちらも基本構造は共通ですが、放熱の仕方が異なるため、設置面やメンテナンス性に違いがあります。

空冷式チラー

仕組み
凝縮器にファンで外気を送り込み、冷媒と空気を直接熱交換させます。エアコンの室外機と同じ原理です。

特徴

  • - 冷却水配管が不要なため、設置が容易で移設もしやすい。
  • - 設置工事などの導入コストが水冷式に比べて低い。
  • - レイアウト変更などによる移設・移動が容易。

水冷式チラー

仕組み
凝縮器で冷媒と冷却水を熱交換し、冷媒の熱を冷却水側へ移して外部へ放熱します。

特徴

  • - 室内に排熱を発生させないため、外気環境への影響がない。
  • - ファンが不要なので運転音が小さく静音性に優れる。
  • - 空冷式に比べ冷却効率に優れる
  • - 冷却水供給のため配管やポンプが必要。初期施工・メンテナンスの手間が増える。

空冷式と水冷式の比較表

 空冷式チラー水冷式チラー
仕組み 凝縮器にファンで空気を送り込み、冷媒と外気を熱交換させ放熱する 凝縮器で冷媒と冷却水を熱交換し、冷却水を介して放熱する
冷却性能 外気温の影響を受ける。周囲温度が高い環境では能力が低下する。 空冷式に比べ冷却効率に優れるが、冷却水の温度や供給量が冷却能力に影響する。
設置・導入 冷却水配管が不要。設置・移設が容易。冷却水側の配管工事が不要なので導入コストは低い。 冷却水配管・ポンプが必要。施工や維持管理に手間とコストがかかる。

タンクありとタンクなし

チラーには、冷却水を貯める水槽(タンク)が本体に内蔵されている「水槽内蔵式チラー」と、内部に水槽を持たない「水槽なしチラー」の2種類があります。

比較項目水槽内蔵式チラー水槽なしチラー
構造 チラー本体に内蔵された水槽(タンク)内の冷却水を設備へ循環させて冷却する 外部の水槽(タンク)やポンプと接続して使用する
メリット ・チラー本体を冷却対象に配管するだけで使用できる
・省スペースで設置できる
・開放型の水槽に直接つなぐことができる
・水槽の大きさや、ポンプの出力など設計自由度が高い
デメリット ・チラーの水槽の大きさを変更できない
・開放型の水槽には直接つなぐことが出来ない
・水槽、ポンプ、配管などを別途用意する必要がある
・チラー本体の他に、水槽や配管の設置スペースが必要

水槽内蔵式チラーは設置が簡単で、購入後すぐに運用を開始できる利点があり、密閉の冷却回路が備わっている装置の冷却には最適です。

一方、水槽なしチラーは、冷却水量や流量を柔軟に調整できる点が特徴です。配管設計次第で、複数の機器へ分散して冷却水を供給することも可能です。

アピステでは水槽内蔵式チラーも、水槽なしチラーもどちらもラインナップしています。チラーの新規導入、既存設備の冷却改善など、お気軽にご相談ください。

3.チラーの選定と導入における注意点

適切なチラーを選定し、導入するためにはいくつかの重要な注意点があります。これらを事前に確認することで、導入後のトラブルを防ぎ、効率的な運用を実現しましょう。

冷却対象に対して、冷却能力が十分か確認する

チラーを選定する際に最も重要なのは、冷却対象物に対してチラーの冷却能力が十分であるかを確認することです。冷却能力が不足していると、期待通りの冷却効果が得られず、機器の故障や生産効率の低下につながる可能性があります。

具体的には、以下の要素を事前に詳細に把握しましょう。

  • - 冷却対象物の正確な発熱量(対象物がどれくらいの熱を発生させるのかを正確に計算する)
  • - 必要な冷却温度(チラーを何度で運転させたいのか、設定温度を決める)
  • - 循環させる液体の流量(冷却対象に供給する液体の量を把握する)

これらの情報に基づいて、チラーの冷却能力(kWやkcal/hなどの単位で表されます)が適切であるかを確認する必要があります。必要な冷却能力は以下の2つの方法で求めることができます。

  • - 被冷却対象物の冷却時間と温度から求める
  • - 循環水の流量と負荷(装置)側からの温度差から求める

※以下のページに計算方法の解説があります。
https://www.apiste.co.jp/pcu/guide/
https://www.apiste.co.jp/contents/pcu/chiller_guide/bacic/ability/

アピステでは複雑な能力計算も専任の技術営業がサポートしております。お気軽にご相談ください。

設置スペースと環境条件を確認する

チラーの冷却方式によって、必要な設置スペースと周囲環境への影響が大きく異なります。

空冷式チラー

比較的省スペースで設置が可能ですが、排熱による室温上昇や騒音の発生が懸念されます。特に屋内に設置する場合は、十分な換気能力を確保し、作業環境への影響を考慮しましょう。

水冷式チラー

冷却効率が高い一方で、冷却塔や冷却水配管のための広いスペースが必要となります。システム全体を設計する際には、これらの付帯設備の設置場所も考慮しましょう。

設置場所の環境(屋内/屋外、周囲温度、換気能力、騒音規制など)を詳細に評価し、最適な排熱方式を選択することが肝要です。その上で、空冷式チラーと水冷式チラーのどちらを導入するかを最終的に決定します。

ポンプの能力を決める

チラーの冷却能力に加え、循環ポンプの能力も重要です。冷却水を効率的に冷却対象まで送り届けるためには、配管状況に応じた適切なポンプ能力が必要となります。

具体的には、配管長(配管の長さ)、配管径(配管の太さ)、継手(配管の接続部品)といった要素によって、ポンプに求められる「揚程(ようてい)」が決まります。揚程とは、ポンプが水を押し上げる高さや抵抗を示すものです。この揚程によって最適なポンプの能力が決定されるのです。
ポンプ能力の決定には専門的な計算が必要となる場合があるので、詳細な計算式について、以下のリンクも参考にしてください。

ポンプ能力の決定のための計算式はこちら

4.目的に合わせた適切なチラーを選びましょう

これまで説明してきたように、チラーはその用途や構造、冷却方式によって多様な種類が存在します。最適なチラーを選定するには、冷却対象物の特性、設置環境、予算、長期的な運用コストなど、さまざまな要素を総合的に考慮することが不可欠です。

アピステでは、お客様のご希望条件や詳細な仕様に基づいて、最適なチラーをご提案いたします。チラーの導入をご検討の際は、ぜひご相談ください。目的に合った最適な一台を見つけるお手伝いをさせていただければ幸いです。

https://www.apiste.co.jp/pcu/chiller-selecting/

『チラー便覧2』を読む
豆知識一覧へ
PCU-NEシリーズ

PCU-NE
シリーズ

ノンフロン冷媒採用で
フロン管理工数0

詳しく見る
PCU-SLシリーズ

PCU-SL
シリーズ

業界最速レスポンス
超高精度

詳しく見る
PCU-Rシリーズ

PCU-R
シリーズ

ワイドレンジ
精密な水温管理に

詳しく見る
PCU-Fシリーズ

PCU-F
シリーズ

ポンプ・タンクレス
多様なニーズに対応

詳しく見る