チラーの定期点検が義務化!フロン排出抑制法と点検の内容とは

工場で使用するチラーには、法律で定期的な点検が義務づけられています。その根拠となる法律がフロン類の放出を抑制する「フロン排出抑制法」です。

フルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称であるフロン類は、人体への毒性が低くチラーの冷媒や断熱材などに使用されていますが、オゾン層の破壊効果や温室効果が大きく、地球温暖化への影響も明らかになっています。

そこで、地球環境を保全するべく、フロン類が大気中に放出しないようチラーを定期的にチェックし、漏えいを防ぐ必要があるのです。

今回は、フロン排出抑制法の概要と、チラーの管理者に義務づけられた定期点検についてくわしく解説していきます。

目次

1.チラー点検を義務化した「フロン排出抑制法」とは

まず初めに、フロン排出抑制法について見ていきましょう。

地球温暖化を防ぐフロン排出抑制法

2015年4月、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)が全面施行されました。先程述べた通り、これは地球温暖化の原因となるフロン類の漏えいを防止するために作られた法律で、2019年4月に代替フロン規制を強化する形で改正されています。

2020年4月1日からはフロン類を回収しないまま機器を廃棄すると、即座に刑事罰の対象となるなど、規則が強化されています。

多くの工場では、フロン類が充填された業務用冷凍空調機器が使用されており、チラーもその一種です。フロン排出抑制法では、これらの管理者(所有者)に機器の簡易点検と定期点検などを義務づけています。

チラーは第一種特定製品に含まれる

フロン排出抑制法の対象となる業務用冷凍空調機器は、第一種特定製品と呼ばれています。

例えば、チラーやパッケージエアコン、ターボ冷凍機などの「業務用空調機器」や、冷凍・冷蔵ユニットなどの「業務用冷凍・冷蔵機器」が該当します。

2002年4月以降に販売された機器には表示義務があるため、シールや印字で「第一種特定製品であること」が記載されていますが、もし分からなければメーカーや販売店に問い合わせておくと安心です。

2.チラーの管理者が行う簡易定期点検

法律で定められたチラーの点検は「簡易定期点検」と「定期点検」の2種類があり、チラーの管理者が自ら行わなければならないのは「簡易定期点検」の方です。

この「管理者」とは、対象機器(第一種特定製品)を所有している企業や法人を指し、管理者は3カ月に1回以上、点検を行わなければなりません。

簡易定期点検では、チラー及び配管部分の以下の項目を検査していきます。

<点検内容>

  • ・異常音や異常振動がないか
  • ・異臭や煙はないか
  • ・循環液温度は設定温度に保たれているか
  • ・凝縮器や冷却水回路の目詰まりはないか
  • ・チラー外観に油にじみ、腐食、サビ、損傷、霜などがないか

など

チラーの点検を行った際は、点検日時と内容を記録し、保存することも義務化されています。適切に管理するために、点検を行ったときは機器ごとに記録簿を作成し、チラーを処分するまで手元に保管しておきましょう。

3.専門業者や有資格者が行う定期点検

チラーの圧縮機の定格出力が7.5kW 以上ある場合は、管理者自身の点検に加えて、1年に1回以上「定期点検」も行わなければなりません。

簡易点検とは異なり、定期点検は「十分な知見を有する者」あるいは「冷媒フロン類取扱技術者」などの有資格者が実施する必要があります。

圧縮機の定格出力は、チラーに貼られている「銘板」というシールで確認できるので、銘板に7.5kW以上と記載があれば有資格者や専門業者に点検を依頼しましょう。

4.チラーの定期点検を行なう2つのメリット

チラーの定期点検には、地球環境の保護以外にも数多くのメリットがあります。最後に、チラーの点検を行う2つのメリットを確認しておきましょう。

耐用年数の増加

一番大きなメリットが、チラーの実質的な耐用年数が延長することです。

経年劣化に伴い、チラーの機能・性能が低下していくことは避けられませんが、定期的に不具合がないかチェックし、都度、清掃やメンテナンスを行い機能や性能をこまめに回復させることで、使用限度に達するまでの期間が延びるのです。

ランニングコストの削減

異常の検知は、ランニングコストの低減にもつながります。冷媒として使用されているフロン類が漏えいすると、冷却能力が低下するため、低下分を補うために消費電力が増加するのです。

また、大きなトラブルが発生してから修理をすると、多大なコストがかかるため、多少の費用をかけてでも定期的にメンテナンスを行ったほうが、維持費の削減につながることが予測できます。

5.まとめ

2015年4月、フロン類の大気放出を抑える「フロン排出抑制法」が施行され、これに伴い、チラーの管理者には定期点検が義務付けられました。

定期点検は2種類あり、チラーの管理者が自ら行う「簡易定期点検」と、有資格者などが行う「定期点検」に分けられます。

簡易定期点検は3カ月に1回の頻度で行うもので、異常音や異臭がしないか、チラーの外観にサビや損傷がないかなどをチェックしていきます。加えて、圧縮機の定格出力が7.5kW以上のチラーには定期点検義務もあり、毎年行わなければなりません。

チラーの点検は義務化されているものの、使用可能年数の延長、ランニングコストの低減といったメリットがあります。定期点検の機会を積極的に活用し、チラーの異常を早期に発見しましょう。

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