配管系統図の読み方と冷却改善のコツ

『チラー便覧2』を読む

製造プロセスにおいて、冷却水を効率的に供給し、安定して冷却・温調することは、設備トラブルの防止、生産性の向上に必要不可欠です。

冷却水が通る設備配管は、「中を目で見て確認する」ことが困難なため、万一トラブルが発生すると、原因の特定に時間がかかる場合があります。

しかし、配管系統図にはそのようなトラブルの発生時に、改善につながるヒントが多く隠されています。

今回は、配管系統図の読み方と、冷却改善の方法について分かりやすく説明していきます。

目次

1.配管系統図を読み解く流れ

配管系統が多くなる設備系統図は複雑に見えることもありますが、順を追って見ていくことで読み解いていけます。具体的には、次の流れが基本になります。

①設備の役割を把握→②配管を分類→③熱源の特定

まず、タンクや水冷式熱交換器、ポンプといった設備の役割を把握し、それらを接続している配管を分類します。その時、配管を流体の種類ごとに色分けすると、全体が把握しやすくなります。最後に、冷却が必要となる熱源を特定します。

2.原料タンク~混合工程の配管系統図の読み方と冷却改善のコツ

それでは、原料タンクから混合工程までの配管系統図を使って実際に読み解いてみましょう。

ステップ①.設備の概要を把握する

まず、配管系統図の記号から各設備の役割や関係性など、配管設備全体の概要をつかみます。

下図の場合、オレンジで示された部分は、貯蔵タンクAとBからそれぞれの原料タンクへ常温の原料を送り、チラー1によって調温していることを示しています。

青い部分では、各原料タンクから供給される2種類の原料を混合タンクに運んで撹拌・混合し、チラー2が適温に調節しています。

緑の部分からは、混合タンクへ供給する原料の量を電動弁が調整し、不要になる一部の原料を原料タンクへ戻していることがわかります。そして、紫の部分は、完成した混合原料を次の工程へ供給する部分です。

このようにエリアごとに色分けを行い、設備ごとの関係性と役割を把握することで、配管系統図全体の概要が理解しやすくなります。

ステップ②.配管を系統別に分類する

次に、配管内を通る流体別に配管を色分けしていきましょう。

ここでは、チラーの冷却水循環回路を水色、原料Aの供給ラインを緑色、原料Bの供給ラインをオレンジ、そして混合原料の供給ラインを紫色で表しています。

こうすることで、どの流体がどこの配管を流れているのか、ひと目で理解できるようになります。

ステップ③.熱源を特定する

最後に、熱源の特定です。機械の効率を上げるために冷却改善を行う場合は、正確に熱源を特定する必要があります。

熱源には、原料タンクで原料を温調する工程で発生する熱として、貯蔵タンク内の常温の原料、ポンプの発熱、外気からの侵入熱があり、混合タンクで混合原料を作成する工程でも攪拌機の発熱や、反応熱などが発生します。

生産工程において、熱源の特定はとても重要なものです。機械の発熱の冷却、原料を混合する際の温度調整、外気温に大きな影響を受ける室温と原料の温度差は、冷却能力の計算に必須の情報です。

こうした熱源箇所の特定によって、効率的かつ正確に冷却ができるようになります。

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3.油圧装置の配管系統図の読み方と冷却改善のコツ

ここからは、油圧装置の配管系統図を読み解くコツをご紹介します。油圧装置はシンプルなシステムから複雑なものまで幅広い種類が展開しているため、系統図を見慣れていないと苦労します。

油圧装置の配管系統図は2つのステップで読み進めていきましょう。

ステップ①.油圧構成要素を分類する

油圧システムは基本的に、油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)、バルブ、油圧ポンプ、油圧タンク、アクセサリの5つの役割に分類できます。

油圧アクチュエータ 圧力エネルギーを仕事に変換します。
例)油圧シリンダ、油圧モータ、揺動形アクチュエータ
バルブ(弁) 作動油のエネルギーの伝達をコントロールします。
例)圧力制御弁、流量制御弁、方向制御弁
油圧ポンプ 昇圧された作動油を供給します。
油圧タンク 作動油を貯蔵します。
アクセサリ 油圧システムが正常に機能するように補助します。
例)熱交換器、フィルタ、計器類

下記のような油圧系統回路の配管系統図であれば、油圧アクチュエータから伸びた配管が、流量制御弁や電磁弁といったバルブを通り、油圧ポンプを経由し、空冷ラジエータやフィルタを通って、油圧タンクに流入していることがわかります。

油圧システムは構成要素の役割を把握することでシステムの全体像が把握できるため、原料タンクの時のような流体別の色分けは必要ありません。

ステップ②.熱源を特定する

油圧装置における熱源は、主に油圧ポンプです。

油圧ポンプは、作動油に圧力と流れを付加する動力源であると同時に、作動油が温度上昇するため熱源にもなり、一定以上の熱の発生は構造上避けられません。

とくに大型の油圧ユニットなどでは、作動油を冷却する機械を準備する必要があります。熱交換器などを用い35~55℃程度を目標温度に設定するといいでしょう。

4.まとめ

専門的な記号が使われた配管系統図は、一見するととても複雑に見えることもありますが、原料などの流体の移動に用いられる配管系統図であれば、部分ごとに設備の概要を把握し、流体ごとに配管を色分けすることで熱源の特定が容易になります。

また多種多様にある油圧装置の配管系統図の場合でも、油圧システムの構成要素を分類することで配管図の全体像が見えてきます。熱源の主になる油圧ポンプには熱交換機などを適切に設置して温度管理をしましょう。

配管系統図の正確な読み解きは、必要箇所を効果的に冷却し、生産性の向上や機械の稼働寿命の延長に役立ちます。

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