ポンプの種類と特徴

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配管に使われるポンプは、用途や構造により、さまざまな種類があります。

ここでは、ポンプの性能の見方、一般的に使われるポンプの種類、その構造と特徴などについて詳しく説明していきます。

目次

1.ポンプの性能を表す流量・揚程(ようてい)とは?

ポンプは外部からの動力によって液体に機械的な仕事を付加し、液体に速度・圧力・位置エネルギーを与える役割があります。主に、液体を移送・汲み上げ・攪拌(かくはん)するときに用いられます。

一般的に、ポンプ性能は流量と揚程の2つで表されます。

①.流量(吐出し量、揚水量)

流量とは、ポンプが一定時間に吐出できる液体量を指します。

流量の単位は、L/min(1分あたりのリットル数)、m³/min、m³/h(1分または1時間あたりの立方メートル数)となっています。

②.揚程(ようてい)

ポンプが液体に付与する速度・圧力・位置などのエネルギーを、水を揚げられる高さに換算したものが揚程です。

揚程は2種類あり、低い水槽の水面からポンプまでの高さは「吸込実揚程」、ポンプから高い水槽の水面までの高さは「吐出実揚程」と呼ばれています。

これらには配管の抵抗が考慮されていないため、実際にポンプで揚水する場合は、実揚程に抵抗を加えた「全揚程」という指標を用います。

全揚程=吸込全揚程+吐出全揚程
   =(吸込実揚程+吸込配管抵抗)+(吐出実揚程+吐出配管抵抗)

揚程は高さを示すため、単位にはm(メートル)が用いられますが、水換算であることを踏まえてmAq(水柱メートルmetre of water)と表記する場合もあります。

2.ポンプには非容積式と容積式がある

ポンプは、構造の違いによって非容積式ポンプと容積式ポンプの2種類に分けられます。

非容積式ポンプ(ターボ型ポンプ)

ケーシング内で羽根車(インペラ)を回して液体にエネルギーを与えるポンプを総称して「非容積式ポンプ」と呼びます。

非容積式ポンプには、以下のような特性があります。

  • ・高速回転により比較的連続流になる
  • ・吸込、吐出揚程は比較的低い
  • ・負荷によって流量が大きく変動する
  • ・定量性が低い

ただ、粘性ポンプに分類されるカスケードポンプは例外となります。低流量ながらも吐出力を高く設定できるため、非容積式ポンプの中では珍しく定量性が高いという特徴があります。

容積式ポンプ

容積式ポンプは一定容積内にある液体に圧力を加えてエネルギーを付与する仕組みを持っているポンプの総称です。

容積式ポンプの特徴には、以下のようなものがあります。

  • ・自吸能力が高く、ポンプ内に液体がなくても吸い上げることができる
  • ・吐出能力が高く、一定の吐出圧・流量を確保できる
  • ・非容積式ポンプと比較すると送液量が少ない

非容積式ポンプと容積式ポンプは、その構造からさらに細かく分類されています。
次の章で詳しく見ていきましょう。

3.ポンプの種類一覧

ポンプは非容積式ポンプと容積式ポンプに分類されたのち、さらにいくつかの種類に分けられます。

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4.非容積式ポンプの種類と特徴

羽根車の回転により液体にエネルギーを付与する非容積式ポンプは、遠心ポンプ、プロペラポンプ、粘性ポンプの3つに大別されます。ひとつずつ特徴を見ていきましょう。

①.遠心ポンプ

遠心ポンプは遠心力を利用したポンプ全般の総称です。その代表的なものに渦巻きポンプ、タービンポンプ、多段渦巻ポンプがあります。

渦巻ポンプ

渦巻きポンプは、ケーシング内の回転羽根車に液体を流し、遠心力で圧力をかけて液体の輸送を行います。20m以下の比較的揚程が低い設備で使用されます。

タービンポンプ

タービンポンプは、渦巻きポンプの回転羽根車の外周に案内羽根を取り付け、より効率的に昇圧して液体を輸送するポンプです。渦巻ポンプよりも高い揚程(20~30m以上)の設備でも使用可能です。

多段渦巻ポンプ

さらに高い揚程の設備に使用したい場合は、多段渦巻ポンプを用います。ひとつの軸に回転羽根とケーシングを何段も重ね、段階的に揚程を上げる仕組みになっています。

この3つの遠心ポンプの能力比較は次の通りです。

【遠心ポンプの能力比較】
渦巻ポンプ<タービンポンプ<多段渦巻ポンプ

②.プロペラポンプ

船のスクリューに似た羽根車を持つポンプをプロペラポンプと呼び、軸流ポンプと斜流ポンプの2つに分けられます。

軸流ポンプ

軸流ポンプは円筒面の中を同心の羽根車から吐き出された液体が流れる仕組みで、揚程は5m程です。低揚程・大容量での使用に適しており、河川の排水用として多く用いられています。

斜流ポンプ

斜流ポンプは羽根車から吐き出された流体が羽根車の主軸と同じ中心を持った円錐面内を流れる構造になっており、比較的、低揚程・高流量で使用されるポンプです。

③.粘性ポンプ

カスケードポンプ(過流タービンポンプ)とも呼ばれる粘性ポンプは、羽根車の円盤周縁に多数の放射状の溝が刻まれた構造をしています。

羽根車の回転により、ポンプの内壁に沿って渦を発生させて繰り返し加圧させ、少量の液体を高圧で移送できます。

非接触で回転するため、摩耗が少なく信頼性が高い特徴があります。

5.容積式ポンプの種類と特徴

容積式ポンプは、一定容積内にある液体に加圧してエネルギーを与えるポンプの総称です。その構造によって往復動ポンプと回転ポンプの2つに分けられています。/p>

①.往復動ポンプ

ピストンやプランジャーなどの往復動により吸込・吐出を行うポンプを総称して「往復動ポンプ」と呼びます。往復動ポンプは、大きく3つに分類されます。

ピストンポンプ

ピストンポンプは最も古くから使われているポンプで、シリンダー内のピストンを往復させて2つの弁を組み合わせることで吸水・吐出を行います。灯油ポンプや家庭用の井戸などに用いられています。

プランジャーポンプ

プランジャーポンプは、プランジャー(ロッド状のピストン)を往復運動させてポンプ内の液体容積を変化させ、吐出口に押し出す仕組みのポンプです。

高圧が得られやすく、吐出し量の調整を簡単に行えるため、高圧ガス機器などによく利用されています。

ダイヤフラムポンプ

ダイヤフラムと呼ばれる膜と2つの逆止弁から構成されるポンプは、ダイヤフラムポンプと呼称されます。ダイヤフラムを左右・上下運動させてポンプ内の容積を変化させ、吸込・吐出を行います。

シールレスのためエア噛み・空転による焼損を起こさないというメリットがあり、高粘度流体の輸送などに用いられています。

②.回転ポンプ

回転ポンプとは、歯車やローターを回転運動させて吸込・吐出を行うポンプの総称で、容積が一定のため定量性があります。ギアポンプ・スクリューポンプ、ベーンポンプがこれに該当します。

ギアポンプ・スクリューポンプ

ギア(歯車)やスクリュー(ねじ)を噛み合わせて歯の間に液体を導き、そのまま回転させて液体の輸送を行うポンプをギアポンプ、あるいはスクリューポンプと呼びます。

粘性の高い液体の輸送には適していますが、ギアを嚙み合わせる構造のため粉体や固形物を含む流体を輸送すると摩耗や噛み込みが発生しやすいという一面があります。

ベーンポンプ(偏芯ポンプ)

ベーンポンプとは、ケーシング内を多数の羽根(ベーン)が付いた回転子が回って液体を輸送するポンプを指します。

ギアポンプ・スクリューポンプと比べて異物に強く、ベーンが多少摩耗しても効率が低下しにくいといった特徴を持っています。

6.まとめ

ポンプは用途・流体種類に合わせ、数多くの構造や種類があります。

その原理構造によって容積式、非容積式の2つに大別され、その後さらに多くの種類に分岐されその特長は様々です。そして、全てのポンプの性能は流量・揚程という共通の指標で表されます。

設備の流量や揚程、液体種別などから、目的に合った配管ポンプを選びましょう。

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