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サーモグラフィカメラについて

赤外線とサーモグラフィについて

赤外線カメラの構造

ここまで赤外線カメラの要素に関してレンズ、検出器と個々に取り上げてきました。
この章ではこれまでに取り上げた赤外線・レンズ・マイクロボロメータの全ての要素を組み合わせた「サーモグラフィカメラ」として見ていきます。いわゆるサーモグラフィを写し出す赤外線サーモカメラはどのような仕組みで温度を可視化しているのでしょうか。

赤外線カメラの要素

赤外線カメラの構造

  • レンズ:サンプルから発生した赤外線を検出器に適切な画角で伝達します。
  • シャッタ:検出器の劣化や変成の補正時に使用します。
  • マイクロボロメータ:赤外線エネルギーを電気信号に変換します。

赤外線カメラの温度特性と補正

赤外線サーモグラフィは対象物から放射される赤外線エネルギーを、赤外線カメラのレンズで結像することで、対象の温度を可視化しています。
絶対零度以上の物質はすべて赤外線を放出しており、マイクロボロメータには、この対象物からの赤外線エネルギーとカメラ筐体から放射される赤外線エネルギーが入射します。
カメラ筐体から放射される赤外線エネルギーはカメラ筐体温度の4乗に比例しますので、赤外線カメラは外気温度の影響をうけることになります。
一般的な赤外線サーモグラフィでは、赤外線カメラ筐体温度が1℃変化する赤外線エネルギーは、対象物の温度で5~20℃に相当します。
このままでは測定時に誤差が生じてしまうので、赤外線サーモグラフィは赤外線カメラの検出精度を高めるために様々な工夫を行っています。

赤外線カメラの温度特性と補正 対象物の温度が5℃~20℃上昇する場合と、カメラ筐体の温度が1℃上昇する場合とではほぼ同程度の赤外線エネルギーの上昇があります。

赤外線カメラの温度補正

赤外線カメラの筐体温度が変化しても安定した計測を行うために、赤外線サーモグラフィではさまざまな工夫がなされています。最も一般的なものとして、シャッタによる温度補正があります。
シャッタ補正を行うタイプは、外気温度の変化によりサーモカメラの筐体温度が変化すると、定期的にメカニカルシャッタを閉じます。
赤外線カメラ筐体から放射される赤外線画像をメモリに保存して、通常計測時に画像処理によって減算することで、対象物からの赤外線エネルギーだけを抽出することができます。
比較的シンプルな構造で温度精度を高めることが可能になりますが、厳密にはシャッタ補正直後の計測値のみが正確な値となります。

カメラの温度補正

シールドタイプ

これに対して、赤外線カメラ筐体の温度が変化しても、マイクロボロメータに入射する赤外線エネルギーを一定にしようとするのがシールドタイプです。赤外線カメラ筐体とマイクロボロメータとの間に、一定の温度に温調されたペルチェ素子などのシールドを設置することで、検出精度を高めます。これにより、サーモカメラの筐体温度が変化しても、マイクロボロメータに入射する赤外線エネルギーが変化しないため、シールドの温度をムラなく温調することが可能になり、より精度を高めることができます。こうした電子冷却によって、赤外線カメラの感度を向上させることが可能になりますが、温調回路が複雑になり、レンズの径がやや大きくなる傾向があります。


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