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サーモグラフィに使用される赤外線とは

赤外線とサーモグラフィについて

温度と赤外線分布

なぜ赤外線サーモグラフィで、熱画像を造り出すことができるのでしょうか。
それは「絶対零度以上のすべての物体は赤外線を放射している」からです。
赤外線サーモグラフィはあらゆる物体から放射される赤外線エネルギーを、レンズによって赤外線検出素子に結像し、電気変換された値をデジタル演算処理をすることで温度に変換しています。
では、赤外線のエネルギーと温度とはどのような関係なのでしょう。下記のステファン-ボルツマンの公式を見てみましょう。

●ステファン-ボルツマンの公式

I=σT4

 I :放出されるエネルギー[ W/cm2
σ:ステファン・ボルツマン定数5.7×10-12[ W/cm2K4
 T:物体の温度[ K ]

赤外線のエネルギーは、絶対温度上昇の4乗に比例して増加します。
下記の例からわかるように、物体の発する赤外線エネルギーは温度上昇に合わせて上昇します。

温 度 赤外線エネルギー
27℃ 0.046W/cm2
(=5.7×10-12×(300)4)
(T=300K)

約16倍

温 度 赤外線エネルギー
327℃ 0.074W/cm2
(=5.7×10-12×(600)4)
(T=600K)

一般的に赤外線サーモグラフィで使われる赤外線の波長は短波長側と長波長側の2種類が存在します。 短波長側の赤外線サーモグラフィは約2μm~5μmの波長を感知し、長波長側の赤外線サーモグラフィは約8μm~14μmの波長を感知しています。

すべての波長帯において物体の表面温度が高いほうが赤外線エネルギーは高くなります。
下記のグラフは、物体の表面温度ごとの赤外線波長と放射エネルギーの関係です。

物体の表面温度ごとの赤外線波長と放射エネルギーの関係グラフ

放射率について

赤外線放射エネルギーと物体の表面温度との間には、物体表面の放射率が密接に関係します。放射温度計測では放射率を考慮する必要があります。一般的な放射温度計測では、下記のモデルを使って放射率補正を行います。

放射率

放射率補正はεを変更して行います。放射率とは、下記の式で求められます。

ε=対象物から放射される赤外線エネルギー/対象物と同じ温度の完全黒体から放射される赤外線エネルギー

※完全黒体よりも多くエネルギーを放出するものがないため、εは0~1の間の値になります。

完全黒体とは

表面反射をせず全ての赤外線を吸収する物体です。全ての赤外線を吸収するため、放射する赤外線エネルギーは最大になります。

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