配管トラブルを防ぐ特殊用途のバルブ

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今回は、特殊用途のバルブの役割や種類、目的や特徴などを解説していきます。

よく利用される6種類の特殊用途のバルブについて詳しく見ていきましょう。

目次

1.三方バルブ(方向切換弁)

配管口が3つある三方バルブは、方向切換弁とも呼ばれ、流路の切り替えや2流路の合流・分流をするときに使われます。

穴が貫通したボール型のバルブをベースとした構造で、LポートとTポートの2種類を用途によって使い分けます。

①.Lポート:流路切り替え用

ボール型の弁の中にL字型の流路があり、弁を90度ずつ回転させて流路を切り替える仕組みになっています。流路が一本である構造上、2流路の合流や分流、直線方向に流すといった機能はありません。

②.Tポート:流路の切り替え・分流・合流など

T字型の流路があるボール型バルブを90度ずつ回転させて、4パターンの流路を作り出すバルブです。

1流路から2流路への分流、2流路からの合流、流路切換、ストレート方向へ流すなど、様々な使い方ができます。

2.チェックバルブ(逆止弁、チャッキバルブ)

逆止弁とも呼ばれるチェックバルブは、流体の逆流を防ぐために使われます。

ポンプ吐出し側の逆流防止、液体配管立ち上がり部の戻りウォーターハンマー防止、異種流体の混合防止にも効果的で、配管トラブルの抑制に大きな役割を果たしています。

チェックバルブは構造や使用目的によって、大きく5つに分けられています。

①.スイング式

構造:蝶番で開閉する
目的:ポンプへの逆流防止
特徴:圧力損失は小さいが耐久性が低いため、流速の早い配管や開閉頻度の多い配管には不向き。揚程・圧力が低いなどウォーターハンマーのリスクがない配管で使用される。

②.ウエハー式(ウイング式)

構造:二枚の半円形の弁体を蝶番で開き、コイルばねで弁を閉じる
目的:ウォーターハンマーの防止
特徴:コンパクトで限られたスペースにも設置可能。ポンプ停止後の逆流発生前に弁を急閉できるため、ウォーターハンマーの防止につながる。その反面、偏流やキャビテーションに弱く、耐久性が低い。

③.ディスク式

構造:ばねの力で円盤状の弁体を急閉させる
目的:ウォーターハンマーの防止
特徴:ポンプ停止時に弁を急閉して逆流によるウォーターハンマーを防止する。流路に弁体が残るため圧力損失が大きい

④.ボール式

構造:ゴム製の球状の弁が、流体の逆流と自重で移動して弁が開閉する
目的:配管内を通る流体の制御
特徴:弁体が固定されていないため、異物などが混入する流体でも使用可能。メンテナンスが簡単で耐久性に優れているが、逆流・ウォーターハンマー防止には不向き。

⑤.リフト式

構造:S字のバルブ内を弁が垂直に移動する、弁の自重で開閉する
目的:流体の逆流防止
特徴:耐久性が高いが、流路が狭く圧力損失が大きい。水平に設置する必要がある、上下の配管には使用できないなど使用箇所が制限される。

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3.フートバルブ(フート弁)

逆流を防ぐフートバルブは、ポンプの吸い込み口に設置して使用します。基本構造はチェックバルブと同様ですが、異物の吸入を防止するため吸い込み口に金網やメッシュが施されています。

フートバルブを設置する際は、以下の点に注意しましょう。

  • ・完全に動作するのを確認してから、正しい向きに取り付ける。
  • ・メンテナンスを考慮した位置に取り付ける。
  • ・空気流入を抑制するため、リークしにくいフランジ接続にする。

4.エア抜きバルブ(空気抜き弁、エアベント)

エア抜きバルブは、空気が溜まりやすい配管の高い位置に設置することで空気の逃げ道を作る役割があります。ポンプの吐出側配管、密閉容器の頭頂部、鳥居配管の最頂部などへ設置され、エア溜まりやエア噛みの対策として活用されています。

バルブ内のフロートが水量に合わせて上下して、左右の弁体の隙間を開閉することで、空気抜きが自動的に行われます。

5.リリーフバルブ(リリーフ弁、安全弁)

リリーフバルブは、異物のつまりやバルブの締め切りなどによって、配管内に過大圧力が発生した時に自動的に圧力を開放するバルブです。

逃げ場を失った流体を開放することで圧力を分散させ、機器の損傷を最小限に抑える機能があります。

リリーフバルブには、バルブが開く設定圧力があるので、使用している機器に合わせて圧力を選定しましょう。

6.減圧バルブ(減圧弁、レギュレータ)

高い液体吐出圧力を下げ、圧力を安定した状態に調整するのが減圧バルブです。不安定な圧力による機器の破損や騒音、振動を抑制する役割があります。

ガスボンベなど気体の減圧で多く使用されますが、高圧の循環水を圧力や流量に制限がある機器に輸送する際にも使用されます。

7.まとめ

特殊バルブには様々な種類があり、配管トラブルを防止するために重要な役割を担っています。

流体の方向転換や合流・分流、逆流防止や空気抜きなど色々な機能を持ち合わせており、エア噛みやドライ運転、ウォーターハンマーなど、配管トラブルの防止対策に欠かせない存在です。

それぞれの特性を把握して、自社の配管に適したバルブを選びましょう。

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