マイクロボロメータについて
赤外線とサーモグラフィについて
赤外線検出素子の種類と原理
レンズで集光された赤外線を電気信号に変換するためには赤外線検出素子が必要です。放射温度計の場合、1つのセンサ(素子)が内蔵されています。
赤外線サーモグラフィの場合、横384個×縦288個、横320個×縦240個等、2次元に配列されたセンサが内蔵されています。つまり、赤外線サーモグラフィは多数の放射温度計を集積したものということもできます。
右記は赤外線検出素子の一覧です。赤外線サーモグラフィはボロメータにより、赤外線を検出しています。
また、ボロメータは小型のボロメータが集積されて成り立っていることから、「マイクロボロメータ」と呼ばれます。
一般的に赤外線サーモグラフィで使われるマイクロボロメータは、酸化バナジウム(VOX)型のものと、酸化シリコン(SiO2)型のものがあります。酸化バナジウム(VOX)型のものは、比較的感度が高く、温度分解能を高めるためには有効です。酸化シリコン(SiO2)型のものは、画素間の特性のばらつきが少ないため、補正が行いやすく、良好な温度特性が得やすくなる傾向があります。
マイクロボロメータの原理
赤外線サーモグラフィで使われるマイクロボロメータは熱的に絶縁された素子が縦横に複数個2次元に配列されています。マイクロボロメータの各素子は、対象物からの赤外線をレンズを通して結像され、熱エネルギーに変換されます。
これによって素子の温度が上昇し、温度変化を抵抗値変化として、電気変換されます。
マイクロボロメータは、赤外線エネルギーを温度変化としてとらえるため、周囲温度の影響を非常にうけやすく、敏感に反応します。
この影響を減らすため、パッケージ内部を真空にしています。
マイクロボロメータの温度特性と補正
マイクロボロメータは、真空パッケージによって、外気と断熱されていますが、構造上、熱伝導をゼロにすることができないため、周囲温度の影響をうけることになります。
この値は非常に大きく、外気温度が1℃変化するのと、対象物の温度が10~50℃変化するのが、ほぼ同程度になります。
マイクロボロメータの温度補正
周囲温度が変化しても安定した計測を行うために、赤外線サーモグラフィでは、さまざまな工夫がされています。通常は、ヒータやペルチェ素子を用い、マイクロボロメータの温度を一定にすることで、外気温度の影響を減らしています。
最近では、マイクロボロメータの温度変化に応じて、あらかじめ設定された補正データで、デジタル的に補正を行うTECレス赤外線サーモグラフィも商品化されています。内蔵された温度センサとマイクロボロメータとの温度ムラや温度変化に対する時定数の違いが誤差成分となります。
- 周囲温度が変動すると、マイクロボロメータの温度も変化するため受光レベルが変化し計測誤差の要因となります。
- 周囲温度が変動してもマイクロボロメータの温度が安定しているため、受光量の変動はありません。