赤外線サーモカメラのレンズについて
赤外線とサーモグラフィについて
ゲルマニウムについて
ゲルマニウムの赤外線透過率
一般的な赤外線サーモグラフィは8μm~14μmの赤外線エネルギーを検出しています。
赤外線サーモグラフィのレンズには、2μm~14μmの領域で光学特性が安定するゲルマニウムが材料として使用されています。
ゲルマニウムをレンズとして使用した場合、表面における反射が多く発生します。
そのため一般的に、反射を抑制するための特殊コーティング(ARコート・anti-reflective coating)を施します。
ARコートを実施することにより、透過率が約50%程度改善します。
ゲルマニウムレンズを通過する光には、レンズを透過した対象物からの赤外線とゲルマニウムレンズ自体から放射する赤外線があります。
ゲルマニウムレンズ自体から放射する赤外線は、放射温度測定においては、誤差要因となります。
ゲルマニウムの透過率と温度の関係
ゲルマニウムの透過率は、温度が上昇するとともに低下します。
放射温度計測においてレンズや、窓材としてゲルマニウムを使用する場合は注意が必要です。
ゲルマニウムの透過率は100℃を超えると急激に低下し、300℃を超えると、ほとんどの光を透過しなくなります。
コーティングについて
赤外線サーモグラフィに用いるゲルマニウムレンズは、対象物からの赤外線をより多く検出器に届けることでより鮮明な画像を得ることができます。
そのためには、ゲルマニウムレンズ表面での反射を抑制することと、傷による影響を最小限に抑える必要があります。そこで、ゲルマニウムレンズ表面に強固なコーティングを行います。
ARコート(anti-reflective)
入射光の1/4波長のコーティングをゲルマニウムレンズの表面に実施します。ゲルマニウム表面での反射を抑制することにより、対象物からの赤外線をより多く検出器に届けることができます。
一般に、ARコートは水や摩擦に弱いため取扱いには注意が必要です。
DLCコート(diamond‐like carbon)
主に炭素と水素で構成される非晶質のカーボン硬質膜をゲルマニウムレンズに形成します。レンズ表面の傷や、汚れによっても検出器へ届く赤外線量は低下します。
特にレンズクリーニング時につく表面の微細な傷が透過度に影響を与えます。硬質なDLCコートを実施することで、この問題を軽減することができます。